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ファストファッションの裏に隠れた知られざる真実

記事作成: 田中 栄里花   記事編集: | Global |2016.04.22

「ファストファッション」という言葉を聞いたことはありますか?ファストファッションとは、最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで世界的に大量生産・販売するファッションブランドを指します。代表的なファスト・ブランドには「H&M」「GAP」「FOREVER 21」「ZARA」などが挙げられます。また、日本のブランドにも「UNIQLO」「無印良品」「しまむら」などがあります。みなさんも必ず1着は持っているほど、ポピュラーなブランドばかりですよね。現在のファッション・トレンドはめまぐるしいスピードで移っていくので、手軽な価格(プチプラ)で最新のトレンドアイテムが手に入ることは、やはりとても便利で嬉しいことです。

しかし、このように低価格でファッションアイテムが手に入るのはなぜなのか、考えたことはありますか?今回は、日本の学生の中でも浸透し、私たちのファッションの中心になっているファストファッションの裏に隠された、途上国の深刻な労働問題に目を向けたいと思います。

 ファストファッションの功罪

people shopping in the city

ファッション業界においてファストファッションが注目されるようになったのは、ここ最近の20年です。2008年にスウェーデン発の「H&M」が日本・銀座に上陸した際は、5000人が長蛇の列を作り、話題を呼びました。その後も各地へ出店を続け、2015年末時点で全国50店舗以上に拡大しています。世界的に見ると、「H&M」の店舗数は3600店舗以上、2015年度はインドや南アフリカなど新興国を含む400店舗以上の新規オープンを予定しており、非常に精力的な展開をしています[1]

このようにファストファッションが人気な理由はなぜなのでしょうか。その答えは、私たち消費者にあります。最新のファッション・トレンドは、非常に速いスピードで変化していきます。今年流行った洋服は、来年には古くて遅れたファッションとなることもしばしばです。そして、こうしたトレンドの急激な変化に応えるのがファストファッションなのです。ファストファッションの目的は、消費者に可能な限り多くの洋服を、可能な限り早い周期で買ってもらうことにあります。「H&M」では1年間に数億枚もの洋服が作られていると言われています[2]。お手ごろな価格でトレンドアイテムを提供しているファアストファッションによって、私たち消費者は知らず知らずのうちに「古くなり飽きたら新しいものを買えばいい」という消費主義に傾いているのです。

それでは、どのようにしてファストファッションは洋服の安価な大量生産を可能にしているのでしょうか?

同じTシャツ一枚でも、その値段は100円のものもあれば、1万円もするものもあります。本来洋服を作ることは非常にコストのかかる作業のはずです。それなのになぜ、ファストファッションのブランドは安価なアイテムを提供できるのでしょうか。

 

低価格でのファスト生産が可能なワケ:途上国における過酷な労働環境

industrial size textile factory

バングラデッシュやカンボジア、中国といった途上国は、労働に関する法律の規制が弱く、貧困層は非常に劣悪な環境で働かされています。

世界第2位のアパレル輸出国であるバングラデッシュでは、主要輸出品の約8割を縫製品が占め、縫製産業はバングラデシュの最重要産業となっています。バングラデッシュ国内では、約400万人が衣服製造に携わっていると言われています。

彼らは月収わずか4000円程度で朝から晩まで働いています。さらにその労働環境も非常に劣悪です。老朽化した工場に非常に多くの労働者が詰め込められて働かされており、工場の安全性も十分に確保されていません。

その象徴的な出来事が、2013年4月24日にバングラデッシュの首都ダッカ近郊で起きました。ラナプラザ縫製工場事故です。地震でも暴風でも爆弾テロでもない平日の昼間に縫製工場が入居しているビルが突然倒壊し、1100人もの人が亡くなりました。ビルには、欧米アパレルブランドのマンゴ(Mango)やベネトン(Benetton)、プリマーク(Primark)などの衣料品を製造する5つの縫製工場が入っており、事故当時は女性を中心に3000人以上が働いていました。そして、事故以前からビルの亀裂などを目にしていた労働者たちは何度も経営陣にビル倒壊の危険性を訴えていたそうです。

経営陣が利益ばかりを追求して安全水準を無視した増築を繰り返し、その結果ビルがミシンの振動などに耐えられなくなり崩壊したと言われています。

このように、安価なアパレル生産の裏には、途上国の人々の低賃金・劣悪環境下の労働があります。さらに、化学薬品などを過分に用いた生産が、現地の環境を著しく破壊していることもあります。私たちが普段着ている服や、もう着なくなって捨てられた服、今ほしいと思っている服は、もしかしたらこうした労働・環境破壊から作り出されたものかもしれません。

「私たちは厳しい労働環境下で服を作っています。事故で多くの衣服労働者が亡くなりました。これは本当につらいことなのです。ただ買って着るだけで、人はどれだけ大変かを知らない。血でできた服なんて誰にも着てほしくありません」 ―バングラデッシュの女性 (映画「The True Cost」より)

 

「エシカルファッション」 持続可能なファッションを目指して

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こうした現在のアパレル生産が抱える諸問題に対する解決策として取り組まれているのが、「エシカルファッション」です。「エシカル(ethical)」とは「倫理上の」という意味です。つまり、「エシカルファッション」とは、環境や生産者に配慮した、地球にも人にも優しい生産・流通によるファッションを指します。「エシカルファッション」は、消費者だけでなく生産者にとっても持続可能な仕組みです。生産地の環境を守るだけでなく、人々に公正な労働賃金と適切な労働環境を確保し、確かな雇用を提供します。

先ほどのように、現在の多くのアパレルは、低賃金・劣悪な環境のもとで人々は労働を余儀なくされています。このような現状を変えるために、「フェアトレード(Fair Trade)」がエシカルファッションの一環で取り組まれています。フェアトレードでは、生産地の人々が経済的に自立できるように、公正な価格による取引はもちろんのこと、先進国の技術を生産者に与えて、より高品質のものづくりを目指しています。

こうした「エシカルファッション」の注目すべき点は、私たち消費者側にあります。この取り組みはただのチャリティーや寄付にとどまりません。エシカルファッションブランドの多くは、生産者の顔が見える洋服づくりをしています。つまり、このワンピースはネパールのある女性団体が作ったものです、というストーリーを消費者に届けてくれます。普段着ている洋服は誰が作ったものか。気にかけたことはありますか。生産者の顔が見えると、普段着ている洋服もかけがえのない宝物のように思えてきます。

さらに、エシカルファッションは現地の文化を大切にします。そのため、非常に個性的でファッショナブルな洋服がたくさん生み出されます。また、先進国の確かな技術を踏まえて作られているため、製品は高品質で何年も着続けることができます。(筆者も中学生の頃に買った洋服を8年近く着続けています)

すなわち、「エシカルファッション」は生産者側のプライドを保ったまま、生産者だけでなく消費者も満足できる仕組みなのです。

 

編集後記

来る4月24日は、ラナプラザ縫製工場事故のちょうど1年後である2014年4月24日から始まり、今年で3回目を迎えるファッション・レボリューション・デーです。ファッション・レボリューション・デーとは、このような悲劇を二度と起こさないために、ファッション業界の在り方を問い直す国際的なキャンペーンです。今年はファッション・レボリューション・ウィークとして18日からの1週間、世界中でさまざまな取り組みが進められています。また、ファッション・レボリューション・デーである24日にはイベントも開催される予定です。興味のある方は、以下のURLをぜひチェックしてみてください!

この記事が、あるべきファッション生産の姿を考え、「エシカルファッション」をより多くの人に広めていただけるきっかけになれば光栄です。


 

 

(記事作成:田中 栄里花   記事編集: )

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