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本場TEDに出演し今メディア大注目の社会起業家、牧浦土雅さんインタビュー(後編)

記事作成: 中野 綾香   記事編集: 和田有紀子 | Global |2014.08.03

ルワンダで教育革命を起こし、TEDxにも出演、本場TEDからインタビューされた経験をお持ちの牧浦さん。このように世界を舞台にして活躍されている牧浦さんは実は弱冠20歳、私たちと同じ現役大学生とのこと。これを聞いただけでも彼の生い立ちや行動力について知りたくなりますが、加えて彼は13歳の時に単身で日本を飛び出し渡英したという経歴の持ち主でもあります。ではこのような積極性はどこから生まれてくるのか、そして世界で活躍するために必要なものとは何なのか。牧浦土雅さんにお聞きしました。

社会起業家/Needs-One ltd.共同創業者/e-Education Projectルワンダ代表

牧浦土雅(まきうら どが)

1993年、東京都生まれ。英国ボーディングスクール出身、ブリストル大学在学中。アフリカ、主にルワンダで国際協力機関と農民とを繋げるプロジェクトを牽引。日本企業の東アフリカ進出へのコーディネートや、国際教育支援NGO活動などにも携わっている。英国と日本では、フェアトレードによる各国のプロダクトの輸出事業を行なう。TEDx出演時の動画は大きな反響を呼び、後日日本語に翻訳され書き起されたほど。"真の国際協力"をテーマに活動中。インドのスラム街に住む40万人に貧困サイクルを抜け出す様々なサービスを提供するNGO「Asha Society」:アンバサダー。 2014年1月、TEDの選ぶ『世界の12人の若者』に選出。著書に『アフリカ・奇跡の国ルワンダの『今』からの新たな可能性』(DBS社)がある。
オフィシャルサイト/ブログ:http://www.dogamakiura.net

学生インタビュアー

中野綾香(なかの あやか)

1992年、長野県出身。慶應義塾大学法学部政治学科在学。
普段は見ることの出来ない人間の新たな一面・魅力を、インタビューを通して引き出したいという信念のもと、トモノカイgi人材projectで活動を始める。

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教育=固定観念を壊せる唯一の武器

 中野「牧浦さんが活動されているe-Educationのプロジェクトは『教育』に関連するものですが、牧浦さん自身、教育というものの意義についてどのようにお考えになっているでしょうか」

牧浦「私は固定概念を壊せる唯一のツールであると思っています」

 中野「それといいますと?」

牧浦「常識や当たり前と思われていることを壊せるものが教育だと思っています。例えば、大学3年生になるとスーツを着て就活するという常識がありますが、教育によって新たな視点を与えることによって、このようなことをやらなくてもいいのではないか、ギャップイヤーを取ったり、ボランティアをしたり、他の道もあるのではないかというように別の途について考えることが出来るようになります。これは発展途上国でも同じであり、例えば宗教や慣習によってタブーとされてきているものがあるとき、新しい文化や世界の話をすることでその人たちに新しい観念が芽生える。教育によって新たな視点がインプットされることによって従来の考えが変わり、自分たちが正しいと思ってきた常識にクエスチョンマークをつけていくことが出来る。これが教育の一番の価値だと思います」

 中野「様々なことに積極的でありパワフルな牧浦さんですが、幼い頃はどのような子どもだったのですか」

牧浦「かなりのトラブルメーカーでやんちゃでしたね。私はエスカレーター式の学習院初等科に通っていたのですが、小学校卒業と同時に転校し、両親を通じて私の話を聞いた藤原先生の紹介で公立の和田中学校に入学しました。そして先ほども申したように中学2年の時に藤原先生からよい意味で背中を押されて外に飛び出していきました」

「私は昔から『安定した環境に身を置きたくない』という気持ちを強く持っていました。それはイギリスに行ってからも同じであり、最初の3年はイングランドのボーディングスクール、最後の2年はスコットランドのボーディングスクールで学びました。そしてその間にもアフリカやインドなどの発展途上国に行き様々な活動をしていました。常に安定した生活を送りたくない、常に変わっていたいという心情により、小学生の時も給食は好きではなかったです。なぜみんなと同じものを食べなきゃいけないのかと常に思っていました」

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安定した環境から脱するために選んだ海外への道

 中野「牧浦さんはどのようにして海外に興味を持つようになったのですか」

牧浦「小学生の時は留学経験のある親の影響が大きく、小学生の頃からサマースクールなどに参加していました。そしてある日父親から、サマースクールなどの短期で海外に行くだけではなく、長期のフルタイムで勉強してもよいのだよと言われ、真剣に海外への留学を考え始めました。日本で大学まで卒業するということはレールではなく様々なオプションがあることがわかり外に飛び出したいという気持ちが強くなっていきました」

 中野「留学しようと思った理由も、安定した環境から抜け出したかったということが大きいのでしょうか」

牧浦「そうですね、変わりたかったということが一番の理由かもしれません。他の国の同世代はどのようなことをしているのだろうかと思っていましたし、日本人として海外でどれほどのレベルでどれほど多くのチャレンジをできるのだろうという競争心もありました」

 中野「実際に留学してみて日本と違うなと感じたことはありましたか」

牧浦「留学先では生徒が皆やりたいことをしていました。日本では制服を着て学校に行き、指定された時間割に沿って教室内で勉強していくことがほとんどだと思いますが、イギリスのボーディングスクールでは生徒がボランティア活動や募金活動をやりたいと言うと先生たちも支援してくれています。そして町の皆さんも応援してくれるため、自分のやりたいことが実行出来る環境でした。日本の生徒の場合、このようなことやりたいという計画だけで終わってしまうことが多いのですが、イギリスの場合は何かあるのならばとりあえず成し遂げてみるという感じでした」

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Just say yes,

 中野「日本の大学生の中には牧浦さんの積極的に活動している姿に憧れる学生も多いと思いますが、牧浦さんの中に流れる人生観とはどのようなものなのでしょうか」

牧浦「私は面白いことが好きなので、簡単な道と難しい道があるときは難しい道を選んできました。人生は一度しかないので、簡単なことをして普通の満足感を味わうよりも難しいことをして数十倍の満足感を味わいたいと思っています。難しいタスクをやり終えた達成感は忘れられることが出来ず、エキサイティングな経験になっていきます。したがって、私はわざと忙しいスケジュールを組み沢山の人と会うことをしています」

「そして私の人生観を端的に表す座右の銘は何かといったら、“Just say yes”ですね。『土雅、これをやってみないか』と言われた際に、『考えさせてください』と返答するのではなくて、その場で『はい、やります』と引き受けるようにしています。自分の前にチャンスがあるのならばそれを逃したくない、自分が引き受けなければチャンスが他の人に回ってしまうということを常に考えています。日本の人にはよくありがちな曖昧な言葉で濁すのではなく、イエスを言い続けることを意識しています」

 中野「“Just say yes”とは、とても前向きな言葉ですが、そのような人生観のもとで過ごしていても悲観的になることはあるのですか」

牧浦「そうですね、もちろん悪いことが起きたときには悲しくなりますが、私は基本的に

前向きで楽観的な方だと思います。現実が悲観的な状況であることがあったとしても、『悲観的』に考えることと『現実的』に考えることは違うため、悲観的になってよいことは何もないと考えています。楽観的にプランを練り、現実的に計画して楽観的に行動していく。そしてたとえ悲劇的なこと、たとえばテストで最悪な点数を取ってしまうということが起こったとしても、数年後には点数なんてどうでもよくなるのだろうなーというように考えています」

 中野「先ほどテストのお話が出てきましたが、多忙な活動と大学生活はどのように両立なさっているのですか」

牧浦「イギリスの大学は日本の大学とは違い、3年であるということと、試験で合格点を取れば単位がくるといったことから、全ての授業に出席しなくてもよいのです。また、多くの大学ではネット配信されている授業を見ることが出来るため、たとえ忙しかったとしても文武両道が可能になっています。そして、大学に通う時は、私と同じような活動をしている同志とディベートをしたり、ルワンダに関する研究をしている教授に会いにいって話を聞いたりしています」

 大学生であることが足枷となるフィールド

牧浦「日本と同様に海外でも、最初から『大学生です』と名乗ってしまうことによって活動がしにくくなることが多々あります。したがって、身分を隠す訳ではないのですが、自分から積極的に学生という身分や年齢に関して言わないようにしています。大学生だということによって立場的に下に見られてしまい、交渉が上手く行かなくなることを避けるためです。そこで、ルワンダでプロジェクトをする際に自己紹介をする時は、自分の名前と活動内容を中心的に言いますね。また、途上国では見た目、第一印象が重要となります。ですので、パッと見て『こいつできるな』と思わせられるようにわざとスーツを着こなしていったり、食事の際におごったりします」

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TEDxという大舞台を経験して

 中野「TEDxに登壇されたと伺っていますが、TEDイベントの現場の雰囲気とはどのような感じでしたか」

牧浦「私は京都で開催されたTEDxに出演させていただきました(動画+日本語書き起し)。TEDとは確立されているイベントですので、普通の講演会の雰囲気とは全く違いました。本場のTEDの規律に基づいて、京都であれば京都風にアレンジしたり、北海道であれば北海道の味を出したりと様々な工夫を施しており、チーム内の個性も強かったです。本番のセットを準備する際には『もう一センチずらした方がいい』というような細かい修正もしていましたし、前日リハーサルの段階でスピーチの内容を変えることもありました。TEDxのスタッフの方々はどれだけ視聴者に対して思いを伝えることが出来るかということを重視しているため、私のスピーチに関しても『そこはGoodという単語ではなくVery goodやGreatのほうがいい』という指導をしてくださいました。TEDx出演の話は昨年の3月頃にいただき、そこから3ヶ月間かけてキュレーターの方と一緒にスピーチや映像、そしてプレゼンを作り上げていきました。その方とはもちろん初対面でしたのでスカイプを通じて色々とお話ししていく中で、私の生い立ちや私自身の性格・考えを共有し、どのような内容のスピーチを完成させれば観客の心に響くのかということを考えました。TEDxでの出演時間は9分という限られた時間なのですが、その数分のためにチームメンバーの方がこんなにも頑張ってくれているのだから成功させなければという思いが強く、それが逆に大きなモチベーションに変わっていきました」

 中野「e-Educationプロジェクト遂行のための交渉や講演会を経験されている牧浦さんは、大舞台に慣れていらっしゃる印象を受けますが、そのような場面でもプレッシャーを感じたりするのでしょうか」

牧浦「たしかに様々な経験をさせていただいていますが、そうはいっても大舞台では緊張します。TEDxに出演した際のビデオを後日見てみると、自分の想像していたものとは全然違うというようなこともありましたね。例えば日本で開催されたTEDxにおいて英語でスピーチをすると、スピーチと翻訳との間に時間差があるため、スピーチの10秒後くらいに笑いが起こったりするのです。そのような時は、もう少しタイミングを考えておけばよかったと反省しますし、大勢の人の前で話すことに慣れるということはないです。しかしながら、以前は600人ほどの前で話すときにも原稿を作って丸暗記しなければ話せなかったことを思うと、今は箇条書きでスピーチできるようになってきたため、やればやった分だけ経験になるということは実感しています」

 Step1で考え、Step2で行動

 中野「最後に日本の大学生に対するメッセージをお願いします!」

牧浦「現在、『世界に飛び出そう』というような動きが多く見られますが、その一方的な視点のみを強調することは少しずれてるという印象を受けます。『行動しなさい、外に出て留学した方がいい』と口でいうことは簡単ですが実際に行動に移すことはハードルが高く、シャイな人、大人しい人、様々な人がいる中で、全ての人に同じことを求めるということは難しいと思います。私は、行動に至るまでのステップを意識しており、行動の前提となるプロセスがないと何も始まらないと感じます。その行動に移るためのステップ1となることとは『考えること』。メディアの情報を鵜呑みにするのではなく、咀嚼しながら自分の意見にしていく。常識と思われていることに対してクエスチョンマークをつけてみる。人間というものは大きな疑問が生まれると、その物事に興味を持って調べることが出来るようになると思うのです。その時点では外部に対して発言出来なかったとしても、考えることを継続していくことによって行動に繋げることが出来る。行動する前に個々が意見を持ち、考える力を養うことこそが一番重要なことだと思います」

「また大学で仕入れた知識に対して受け身でいるのではなく、多様な業界・方面からの意見を取り入れて考えていくことが大切です。これをシナジー効果というのですが、柔軟に何でも受け入れる姿勢が必要なのかもしれません。そして同時に考える力を養うことによって、固定概念や先入観を持たずに常識を崩していくことに繋がります。教師不足により教科書のみで学ぶことが常識であった世界にDVD授業という新しい常識を持ち込む。ゲームの中でしか考えられなかった仮想通貨というものが、ビットコインの登場によって現実にも進出する。このようなイノベーションというものは、単に行動するのではなく、じっくり考えるというプロセスを経たからこそ成し得るものだと思っています」

(記事作成:中野 綾香   記事編集: 和田有紀子

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