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ヒカルの碁を監修した囲碁棋士 吉原 由香里さんインタビュー

「“優れた決断”のためにすべき2つのこと」

記事作成: 田中嘉   記事編集: 田中嘉 | Innovation |2013.01.16

囲碁棋士

吉原 由香里(よしはら ゆかり)

囲碁漫画「ヒカルの碁」監修などで活躍する、棋士。 1973年東京都生まれ。6歳で父親と囲碁を始め、13歳で加藤正夫九段に入門。95年女流棋士プロ試験合格。96年慶應義塾大学環境情報学部卒業後、2002年までに五段まで昇段。05年国際囲碁連盟理事。07年第10期女流棋聖戦で初タイトル獲得。囲碁入門書等の著書多数。NHK囲碁番組への出演、囲碁漫画「ヒカルの碁」監修などで活躍し、11年3月に長男を出産、4月より棋士名を旧姓「梅沢由香里」から本名の「吉原由香里」に変えた。国内外で囲碁の普及活動にも取り組む。NHK大河ドラマ『篤姫』でも囲碁指導を行ったことでも有名。
HP:http://www.yukari.gr.jp/

学生インタビュアー

田中 嘉(たなか よしみ)

1991年東京生まれ。19歳でインタビューをはじめ、これまでに棋士、デザイナー、職人、世界的企業の社長、芸能人やホストまで70人近い人にインタビューし、記事を作成・発信している。慶應義塾大学清水唯一朗研究会でインタビューを学ぶ。20歳より会社の連載や財団、NPOなどの記事作成多数。講師として、日本インタビュアー協会文章編集セミナーや品川女子学院総合授業、インタビュー・編集講座@新丸の内ビルディングなど。その他慶應義塾SFCや都立高校にてインタビュー講演を実施しインタビュー普及活動をしている。@Josh_yoshimi HP:yoshimi-tanaka.com

勝負師、吉原さんの「決断人生」

・決断1 6歳で囲碁を始める
・決断2 14歳で加藤正夫九段への入門を決断
・決断3 そのまま棋士の道へ進まず、慶應義塾大学への進学を決断。
・決断4 一度はプロ棋士への道をあきらめかけたが、やはりプロ試験を受けることを決断。
・決断5 元サッカー選手吉原慎也さんとの結婚を決断。

「優れた決断」のためにすべき、2つのこと。

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田中「僕もいま就職活動を迎え、「決断すべき人生の岐路」にたたされています。また、現代社会における日本も、中国などとの国際関係やグローバル時代において、舵取りの決断が必要とされています。棋士に問われる重要な力として、「決断力」があるかと思うのですが、いかに決断すべきか教えていただけますか。」

なんと4320通りの「一手」が存在する、囲碁。緻密な読みと、バランス感覚、そして、並ならぬ“決断力”なしにはプロ棋士として生きていけない。自身のことを、「いやぁ、わたし決断力なんてそんなにないですよ(笑)」と、謙虚な吉原さんは「決断の方法」について、こう語る。

吉原「決断力ですか。人がよりよく決断する方法は、大きく二つあると思います。一つ目の方法は、“「自分の感情が動かされた瞬間」を振り返ってイメージしてみること”です。例えば、自分が今まで経験してきた中で、「一番楽しかったこと」「一番悔しかったこと」「一番嬉しかったことはなんだろう」とイメージします。そうすると「本気で打ち込んでいたこと」や、「大事にしている価値観」が浮かび上がってくるんです。そうしたら、それを参考に決断をすれば良いのではないでしょうか。」

田中「確かに、「決断の基準」がないと決断ってなかなかできないですよね。まず、自分の過去を振り返る。そして、そこから浮かび上がってきた「本気で打ち込んでいた大切なこと」や、「大事にしている価値観」を基準として決断するということですね。」

吉原「そうです。例えば私の場合、大学3年時、プロの道に進むか、就職活動をするかすごく悩んでいました。でも、実は「悩んでいた」のではなくて、結局は、プロ試験を受けてまた落ちることが「怖かった」んですよね(笑)。怖いから、目指すことをやめようと思っていました。
そんな時に、「自分が一番嬉しかったときってなんだろう」などと自分の感情が大きく動いた瞬間を思い返してみるとほとんど全部囲碁関連でした。そうやって、「本当は囲碁の道へ進みたい自分」に気づいたとき、また本気でやろうという気持ちになれました。だから「イメージしてみること」は大事なのかもしれないですね。」

田中「なるほど。確かにこれは、意図的にイメージしてみないと、気付けないことかもしれませんね。」

吉原「はい。」

田中「そして、一番嬉しいときが、やはり囲碁関連だというのは、さすが囲碁棋士ですね。」

吉原「そうですね。なんだろう。嬉しさでも悔しさでも、何でも良いのですが、『自分の感情が大きく変化するコト』というのは、きっとその人にとって大きな価値をもつ活動なんです。本気でやるからこそ、感情が変化しますから。まあ、全部がそうとは限らないですけどね。」

決断のポイント 1

「自分の感情が動かされた瞬間」を振り返ってイメージしてみる

  • 「一番楽しかったこと」「悔しかったこと」「嬉しかったことはなんだろう」とイメージします。
  •  そうすると「本気で打ち込んでいたこと」や、「大事にしている価値観」が浮かび上がってくる。
  •  そうしたら、それを参考に決断をする。

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吉原「もう一つの方法は、“仮に、すべての夢が実現するとしたら自分は何をしたいか”と頭の中で考えます。つまり、現実から一旦離れて、「理想」を描くということですね。それから、どうしたらその理想に「近づく」ことができるかという基準で、『決断』をします。
私自身、将来について悩みに悩んでいたとき、「もしすべての夢が実現するとしたら何になりたいか」って想像しました。そうしたら、「やっぱり、囲碁のプロになれたら、嬉しいな」と、心からそう感じてしまったんです。
それは、プロの棋士になることができれば、(当時の心境としては)亡くなった父を喜ばせることができるということもありますし、純粋に、勝つ喜びを味わいたかったからですね。」

決断のポイント 2

“仮に、すべての夢が実現するとしたら、
自分は何をしたいか”考える

  • 1. 現実から一旦離れる。
  • 2. すべての夢が実現したら何をしたいかという「理想」を描く。
  • 3. どうしたらその理想に「近づく」ことができるかという基準で、『決断』をする。

決断力が、鈍るのはなぜか

田中「ところで、囲碁の「一手」の決断や、「人生の決断」において、吉原さんでも「決断が鈍るとき」はあるのでしょうか。また、どうしたら、鋭い決断ができるのでしょうか。」

吉原「もちろん、ありますよ。これを成し遂げよう!っていう「目標」がないときは、割と決断が鈍ります。
例えば、タイトル戦の真っ最中で、「勝ちつづける」という目標を常にもっている期間は、目標が在るから良い決断ができます。「勝つ」ためにはこうすればいい、ああすればいいって、自ずと、すべき決断が見えてきますからね。でも、そういった「はっきりとした目標」が自分の中にない時は、囲碁や生活においての「決断力」って鈍るんだとおもいます。」

田中「やはり、目標を描くことは大事なのですね。gi人材のイノベーション要素にも、目標設定といいますか、理想を設定する力「理想設定力」が含まれています。」

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吉原「余談ですが、一児の母となった今は、2つの軸で、日々「決断」をしています。囲碁以外にも「我が子が喜ぶことをやろう!」という「目指すこと」がありますから(笑)。主人と子供を大切にしたいなと思っています。

そうすると、決断をするときも、「囲碁が自分のすべて」という時の脳とは全く違う「脳」を使っている感じがしますね。以前は全く家庭的ではなかったので、やっと家庭的になってきたというか、主婦力を鍛え始めているという段階です。結婚十年目にして(笑)」

これも、一局 !?

田中「プライベートな質問で申し訳ないのですが、元サッカー選手(ゴールキーパー)として活躍されていた、吉原慎也さんとの「結婚」というのは、難しい決断ではなかったのでしょうか。」

吉原「う〜ん、どうなんですかねえ。難しいというか、やはり、少しは考えましたね。だって、人生の中の一番大きな決断といっても過言ではないですから。」

田中「失礼な言い回しで申し訳ございませんが、サッカー選手といえば、決して安定的なお仕事ではないですし、正直なところ、怪我などがあったら不安でしょうし、引退もありますし。」

吉原「うん、そうなんです。まさか自分がサッカー選手と結婚するなんて、思っていませんでしたよ(笑)」

田中「あえてお聞きしますが、ご結婚という「決断の理由」は何ですか?」

吉原「やっぱり、主人がすごく魅力的でしたから(笑)。でもね、いろいろと考えたあげく、最終的には、「まあ、なんとかなるか!」と思ったんです。誰と結婚しても、何がおこるかなんて、わからないわけですし。だったら、自分が心から信頼できて、自分にとって魅力的な人と結婚しようとおもいました。」

田中「確かに、何が起こるかなんて誰にもわからないですよね。」

吉原「そう。「結婚も、“一局”か!」と思ったわけです(笑)」

(一同笑い)

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決断力とは、「自分らしさを表現する一つの力」。

田中「約1時間半、「決断力」について伺ってきました。最後になりますが、「これからの時代に求められる決断力」についてお聞かせください。」

吉原「そうねえ。結局は決断力って、「自分らしさを表現する一つの力」なんだと思います。「これからの時代に求められる決断力」ということですが、あんまり深く先を読みすぎても、その通りになるとは限らないんですよ。だから、「目の前にあること」に対して、「自分らしく」決断をする。自分らしくというのは「自分の理想と向き合う」ということです。そのためには、冒頭でもお話ししましたが、「自分の感情が動かされた瞬間」をイメージしたり、「仮に、すべての夢が実現するとしたら自分は何をしたいか」を自分の心に聴いたりすることが必要です。自分の心は「自分が一番幸せになる方法」を実は知っているんですよね。
自分の理想を大切にして決断をすれば、結局長期的にみても、良い決断ができています。だから、まずは、自分の心に問いかけてみてください。」

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決断のコツ

  • まずは、自分の心に問いかけてみる。

編集後記

吉原さんに伺った決断の方法をまとめてみると、第一に、「自分の感情が動かされた瞬間」を振り返ってイメージしてみる」こと。第二に、「仮に、すべての夢が実現するとしたら自分は何をしたいかを考える」ことでした。“過去をイメージする”前者と、“未来を想像する”後者は、同じ目的でも時間軸が異なります。つまり、決断をするときは、自分の視点を過去と未来に「広げる」ことが大切なのでしょう。過去と未来に視点を広げることで、自分の理想を設定することが可能になります。理想を設定するからこそ、その理想を達成する為に逆算し、人生の「一手」をうつことができるというわけです。つまり、決断をするということは、「自分(の理想)を知る」ということにもなる。決断をする力も、自分を知る力も、gi人材の各要素として含まれていますから、このような意味でも、gi人材の重要性を改めて感じるインタビューとなりました。
私事ですが、インタビュアーとして私が一番「嬉しいとき」は、読者の方からの心のこもったコメントがきたときです。みなさんは、どんな時に本当に嬉しくいでしょうか。すべての夢が実現するとしたら、何をしますか? なんでも結構です。コメントをいただけたら嬉しいなあ、と思っております。

(記事作成:田中嘉   記事編集: 田中嘉 )

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