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キャリアデザインのプロ、株式会社AXIOM代表取締役 渡邊光章さんインタビュー

「やりたい」じゃ足りない~1万6000人の転職相談を行ってきた、人材のプロに聞く~

記事作成: 田中嘉   記事編集: 田中嘉 | Innovation |2013.01.30

これからの時代に必要な「人」を考えるにあたって、今回はプロ中のプロにお話を伺えた。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを行う渡邊さん。1万人以上の転職相談を行ってきた会社を創業した方だ。渡邊さんに、大学で農学部生物コースを選択した理由を尋ねたところ驚くべき回答が返ってきた。「5歳の時、死ぬことって何だろうかと考えはじめました。“5歳児が死ぬことと60歳が死ぬことは意味が違うのか”を考え続け、1週間徹夜した記憶が在ります。そうするとだんだん「死」が怖くなってきたんです。だから生きているものとして、「生き物」が好きになりました。」 幼少期から「自ら考える」ことを生業としてきたといえる渡邊さん。日々「これからの時代に必要とされる人材とは何か」を考えている。今の人が抱くべきは、「願望」では足りない。では、何が必要とされているのか?

株式会社AXIOM代表取締役

渡邊 光章(わたなべ みつあき)

海外大学大学院留学準備校にて創業期メンバーとして入社後、事業開発ならびに海外トップビジネススクールMBA留学を主体とした留学カウンセリングを主に担当。1990年、同社戦略子会社にて人材紹介業をスタート。1993年株式会社アクシアムを創業。民営人材紹介事業協議会 元理事(1997-99年)。在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長(1998‐2002年)。「転職」からキャリアに展望をもつ「展職」を提唱し、MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。著書に「転職しかできない人、展職までできる人」(日経人材情報刊 2002年)がある。
HP:http://www.axiom.co.jp/

学生インタビュアー

田中 嘉(たなか よしみ)

日本インタビュアー協会認定インタビュアー。
1991年東京生まれ。小学1年生から日本伝統芸能「能」を始め、6年間学び宝生流仕舞課程修了。将棋初段などを取得。高校時代に、オーストラリア、イギリスケンブリッジ、ブライトンなど3度留学。高校3年時には、小学生などにコミュニケーション教育活動を行うKEAOSを設立。その後慶応義塾大学環境情報学部に入学。60以上のインタビュー経験をもつ学生インタビュアー。
@Josh_yoshimi
HP:http://yoshimi1230.wordpress.com/

 

「やりたいことをやりなさい」という助言に、疑問を覚える

田中
「今回のインタビューでは、これからの時代に必要とされる人材とは何かお聞きし、約3万人の学生へ発信させていただきます。どうぞよろしくおねがいします。」

渡邊
「大学生に向けて発信されるということですね。私も、たまに大学生に向けたメッセージを目にします。そうするとよく、「やりたいことをやりなさい」という助言がされていますよね。私は、これに少しばかり「疑問」を覚えます。」

田中
「なぜでしょうか。」

渡邊
「なぜこれに疑問を感じるのかといいますと、実際のところ、そう簡単に「やりたいこと」というものは見つけられないからです。だってそうでしょう。みなさんも自分のやりたいことは何かと決めたときを、振り返ってみてください。仮に見つけられたとしても、すぐに変わってしまったのではないでしょうか。だから、私が同様の助言をするならば「生涯どんな苦労をしても楽しいと思えるものを見つけなさい」と言うべきかもしれません。しかし、いずれにしても、そのような絶対的で普遍的な「何か」を見つけるのは困難です。なぜなら、人の気持ちというものは環境や成長によって移り変わるものですし、私たちが生きている時代自体も、常に変化していくものだからです。」

渡邉2

田中

「確かに、僕自身の「やりたいこと」というのも変遷しています。では「普遍的な何か」を見つけるのが困難な時代の中で、私たちは何を<確かなよりどころ>として生きていけば良いのでしょうか。」

渡邊
「まあ、『頼るな、自分で考えろ』ということですね(笑)。そして、これが今日お伝えしたい、僕の結論。私たちは、普遍的なものがなく、激しく移り変わる時代に生きています。だからこそ、あたりまえですが、まずは<確かなよりどころ>を探すのではなく、ジブンで考えなくてはならないのです。言い換えれば、最初から人に頼りすぎるのではなく「考えて、行動して、感じる」っていうサイクルを自分でやるべきなのではないかと思います。そのような人間が、これからの時代には必要なのではないですかね。」

渡邉3

田中

「自分で考えられる人間ですか。確かに自分を含め、周りの学生を見ていても、人の考えに流されたり、大事な決定を他人にゆだねたりする人は多いかもしれません。では「自分で考える」ということにおいて、「何を」考えれば良いのでしょうか。」

「願望」ではなく、「展望」を描きなさい。

渡邊
「学生のみなさんに考えていただきたいこととして、私が今日申し上げたいのは、「自分の長期的な『展望』」を考えてほしいということです。つまり、いつ・どこで・誰に・何をしたいかということ。なんとなくでも良いんです。例えば、10年後くらいには日本の田舎で農業をして、地方のお年寄りの農業ビジネスを活性化したい、でも良い。」

田中
「『展望』ですか。これは、願望などとは違うのですか?」

渡邊
「『展望』は、やりたいことや願望とは違います。展望と願望の違いは、「目標」と「努力」があるかないかです。「願望」とは、たとえ未来を描けていても、独りよがりに願っているだけ。それでは何も始まりませんよね。一方で『展望』とは、具体的な目標と努力をともないます。つまり、100歩先の未来の目標が明確であり、そこへ到達する為に、そこまでの99歩の道のりを「展開」できている。だからこそ「1」を踏み出せるし、その努力ができる。これが「展望」です。」

渡邉4

田中

「なるほど。わかりました。ただ、さきほどおっしゃったように、未来に描いた「100歩先」というのは変わりやすい。そうすると、そのために踏み出す一歩がどれだけ未来につながるものかという「正確性」は薄いのではないでしょうか。」

渡邊
「確かに、その一歩の正確性は薄いかもしれないです。そして、その一歩がどれだけ未来に直結するかということは、誰にもわからないわけです。言い換えれば、この世界は複雑ですから、一歩がもたらす変化が、時に「大きな変化」に変わりうることもあります。
しかし、だからこそ、ちょっとしたアクションがものすごい大きな価値をおびたりするんです。だから、「1」の努力は重要。それに、そもそも自分が描いた未来が、本当に自分に合っているかなんて、努力を積み重ねなくてはわからないですからね。どんなにすごい人だって、いきなり100になる人はいない。必ず1の時期があったんです。」

<ポイント>

「展望」を抱きなさい。そのためには、1の努力をふみだそう。

 

目標設定の落とし穴とは?

田中
「最初の一歩の努力について、もう少し教えてください。トモノカイの定めるgi人材にも、遠い未来を見据える「理想設定力」や、その理想に至までの「目標設定力」というものがあります。ただ、いずれにしろ、その目標のために一歩を踏み出すことは、なかなか気が引ける人もいると思うんです。」

渡邊
「そうかなあ。」

田中
「そうは思わないですか?」

渡邊
「うん。理想や目標を「どう設定するか」という話だと思うんです。何かを設定するときに、そこに「自分が楽しいと思えること」を入れて設定することがコツなんです。例えば、英語をしゃべれるようになりたいという目標を掲げたとしても、単に「頑張ろう」というのではうまくいきません。僕も英語がすごく苦手だったのですが、きれいな外人の先生がいて、その人と話せるようになりたいという「自分の楽しみ」をみつけたから頑張れました。」

田中
「上手な目標設定ですね(笑)。単純に目標設定するのではなく、自分の「楽しみ」を見いだしながら設定することがポイントということですね。トモノカイが定めるgi人材にも、自分で気持ちをセットする「マインドセット力」が含まれています。自分の気持ちがのるように目標を設定すれば、努力も意外と楽しめるのかもしれませんね。」

<ポイント>

目標を設定する際、自分の「楽しみ」が見いだせるように設定する

「展望」をもつにはどうすれば良いのか

田中
「先ほど、「展望」とは、いつ・どこで・誰に・何をしたいかというビジョンだとうかがいました。では、実際に展望をもつためには、どうすれば良いのでしょうか。」

渡邉5

渡邊

「これも極論を言えば、『頼るな、自分で考えろ』ということですね(笑)。細かく分けると3つのステップがあります。第一に、自分で積極的に行動することです。たくさんの本を読み、たくさんの人に合うこと。インターンシップをやることも良いですし、旅行でもかまわない。恋愛でもかまわないんです。
そうすると、なにかしら壁に突き当たるのですが、そこで大事なのが次のサイクルです。それは、自分で考えて、行動し、感じて、選択するということ。これが第二のポイントです。やっている中で壁にぶち当たるたびに、このサイクルを繰り返してみてください。そうすると、自分の展望がだんだんと見えてきます。第三に、自らの現実的な「展望」をつくってみてください。予見不可能な遠い未来よりも、1〜3年後程度の、現実的な展望を考えることです。1から3のいずれにも共通しているのは、与えられた答えから選ぶのではなく、自分で選択していくことですかね。」

田中
「結局は、自分で考えるということが大事だということですね。わかりました。ちなみに、この「自分で」というのは、100%自分だけで考えるのではなく、他人の意見も参考にしながら、最終的には自分で考え、決定する、ということでしょうか。」

渡邊
「そうですね。人の意見を聞くことは大切です。どんな仕事も誰かの為になるわけですから、独りよがりのプランではなく、他人との対話の中で、自分自身のことを再発見したり、展望を見つけることができます。また対話を続けていれば、今の社会や顧客のニーズをくみ取れるようになります。大成功した人は、20代から回りの人と異なった展望を必ず持っています。大学生の皆さんが1年2年とキャリアを積んだ後、次の展望に向かってキャリアを積んだ後、次の展望に向かってキャリアの相談がしたいと言う時がきたら、ぜひ私までご連絡ください。」

<ポイント>

展望をもつためには、
1.まずは、積極的に行動する
2.壁にぶちあたったら、自分で考えて、行動し、感じて、選択する
3.1〜3年後程度の、現実的な展望をつくる。

田中
「本日はありがとうございました。それでは、最後に一言いただけますでしょうか。」

渡邊
「「考えれば、必ず答えはでます」ということを改めてお伝えしたいです。自分が将来どうしようか、具体的に何をしようかと考えたら、必ず答えが出てくるんです。考えることをすれば、例えば「こうしたら自分も成功できるのではないか」というちょっとした希望もでてきますし、自分の実現したいことをどう実現しようかって考えるだけで、「小さな展望」になります。「世の中を変えよう」という展望をもてる人はそれはそれですばらしいですが、「自分を変えたい」という小さな展望でも「展望」なんです。明日から歯を磨こうでも良いの(笑)。どんなに不平等があったとしても、みなさんが全員等しくもっているものは時間ですから、ものすごく大事にしなくてはいけない。頼らず自分で考え、何かしらのあなたらしい「展望」をもってみてください。」

渡邉6

編集後記

実は、僕には双子の兄弟がいる。幼稚園時代の「展望」は一緒だった。
ピュアな心をもっていた僕たちは「母親を驚かす」ことに必死で、母の誕生日にサプライズでケーキを作ったりしていた。中学から別々の学校へ通い、いまの展望は大きく異なる。「建築家になりたい」という兄弟は理工学部へ進み、私は、教育や心理、プログラミングを学ぶべくSFC(慶應義塾湘南藤沢キャンパス)へ進学した。遠い将来は、教育に携わりたい。同じような遺伝子をもつ私たちも、環境が違えば異なる展望をもつ。みなさんは、どんな環境に育ち、どんな展望をお持ちだろうか。

 

(記事作成:田中嘉   記事編集: 田中嘉 )

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