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元マッキンゼー経営コンサルタント小杉俊哉さんインタビュー

「成長する学生と変わらない学生の違いとは?」

記事作成: 田中嘉   記事編集: 田中嘉 | Innovation |2013.05.01

「自分らしさ」という言葉は使わない。自分らしいかどうかということは、自分にはわからない。その人らしいかどうかは、第三者が創り出している幻想のようなもの。創りだされたイメージに合わせた自分ではなく、今この瞬間ありのままの自分で人と接することが大事。  小杉氏は新卒で日本電気(NEC)に入社、海外営業や法務関連の仕事に従事した後、30歳でマサチューセッツ工科大学(MIT)ビジネススクールに入学。帰国後マッキンゼー日本支社を経て、30代という若さでユニデン、アップルといった名だたる企業の人事トップを歴任、39歳で独立した。その人生を振り返り、インタビューでこう語っている。「これからの人生は、いかなる場面も“仮面”をとって生きていこうと私が決めたのは42歳のときでした。」自分をいかに保てば良いのか。私たち学生はどう成長していけば良いのだろうか。

元マッキンゼー経営コンサルタント 元アップル人事総務本部長 慶應義塾大学SFC研究所上席所員

小杉 俊哉(こすぎ としや)

1958年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、日本電気株式会社入社。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーインク、ユニデン株式会社人事総務部長、アップルコンピュータ株式会社人事総務本部長を経て独立。應義塾大学大学院政策•メディア研究科准教授を経て、現在は慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、THS経営組織研究所代表社員。その他数社のベンチャー・中小企業の社外取締役、監査役などを務める。組織と個人の両方から働きかけ、刺激を与え、元気にすることをミッションとしている。著書に『30代の働き方には挑戦だけが問われる』(すばる舎)、『リーダーシップ3.0−カリスマから支援者へ』(祥伝社新書)、『パーソナル・リーダーシップで仕事を進めろ!−9つのビジネス筋トレ』(ぱる出版)など多数

学生インタビュアー

田中 嘉(たなか よしみ)

日本インタビュアー協会認定インタビュアー。
1991年、東京で双子として生まれる。6歳より能を始め、宝生流仕舞課程を修了。高校時代にオーストラリア、イギリスブライトン、ケンブリッジへの留学を経てKEAOSを設立。小学生を対象としたコミュニケーション教育活動を行う。その後慶應義塾大学環境情報学部に入学。翌年、本質を考える対話コミュニティCreNate設立。インターン先での取材をきっかけに、ライフワークとして行っていたインタビューを本気でやることを決意。認定インタビュアー資格を取得する。これまでに囲碁棋士、デザイナー、職人、世界的企業の社長、芸能人やホストまで60人ほどの記事を作成し発信。2012年に日本インタビュアー協会広報課長として、インタビューの普及活動をしている。
@Josh_yoshimi
HP:http://yoshimi1230.wordpress.com/

小杉1

◆自分らしさの模索ではなく、そのままの自分でも良いのでは

田中「まず、そのままの自分であり続けるということに関して、お聴きします。私たちが人と接する時には「そのままの自分でいる(=知らずしてかぶってしまっている自分の仮面をとる)」ことが大事だとおっしゃっていると思います。これはそもそも、私たちが日々知らずして「仮面」をかぶっているということですか?」

小杉「そうです。まさにいま、自分に仮面をかぶっていないですか? 何か、無理していませんか? 友達といるときや、普段の姿とは違う<何か>をまとっているでしょう。その「ありのままの自分」ではない、つくられた自分が仮面です。緊張してしまったり、思いついた意見を言うことができなかったり、というのが仮面をかぶっている状態です。仮面をかぶっていると、結局自分が疲れてしまうんですよね。そして、仮面をかぶった上で発する言葉というのはなかなか相手に響かない。私も教壇に立って学生に授業をしていますが、いまはそのままの自分で授業をするように心がけています。自分のまぬけな話も失敗談も話します。そうすると学生たちも、自分や内容について身近に感じてくれるんですよ。」

田中「そうですね。確かにそのような先生の方が近寄りやすいですし、内容も頭に入ってくる気がします。ちなみに、小杉先生はどのような仮面をかぶっていたのか、教えていただけますか。」

小杉「そうですね。いろいろありました。まず、大学受験の浪人時代です。合格発表での出来事をきっかけに父との間に距離ができ、仮面をかぶって接してしまいましたね。浪人した後の受験での合格発表のとき、私は自分ひとりで結果を見たかったんです。だから父親にも、絶対に見に行かないでほしいとお願いしていた。でも、父は受験番号を机の引き出しから探して見に行っていたんです。そんな、つまらない理由から、なんとなく距離ができて、不信感が生まれていってしまった。」

田中「そうだったのですね。」

小杉「まあ、父親との関係は就職して良くなっていったのですが、なんとなく、わだかまりはありました。その後、父親がシャイドレーガー症候群という、小脳が萎縮していく病気になってしまったんです。あらゆる運動神経が侵されていきました。寝たきりの状態が5年くらい。その5年の間も、もちろんお見舞いに行って励まして、ということはしていました。」

◆仮面をとるには?

小杉「仮面をとる、というのはなかなか難しいです。でも、少し意識をすればできていきますよ。私自身、直接的に仮面がとれたのは、「コーチング研修」や「仮面をとる研修」のようなものを受けたのが直接のきっかけでした。父が危篤だという知らせを受けて海外出張から戻ってきた時のことです。戻る途中、もうこれで会えないかもしれないなあと思っていたのですが、小脳は萎縮しても大脳はしっかりしていて、幸いにも意識が戻っていたんですよね。それがものすごく嬉しくて、父親に抱きついたんです。

それが仮面を取る研修を受けた直後でした。そのままの自分で、プライドみたいなものも消えていましたから、子どものころ以来初めて父に抱きつきました。「自分が今こうしていられるのはお父さんのおかげだよ」と言って、泣きながら感謝しましたよ。それを聞きながら父親が、涙をボロボロ流していたんです。真っ青だった父親に血の気がめぐって血行が良くなって、真っ赤になっていました。そのとき、会話にこそならなかったけれど、お互いに心が通った気がしていて。「これからの人生は仮面をかぶって過ごすのをやめよう、いかなる場面も。特に、大切な人の前では。」と、心に決めましたね。それが、42歳のときです。だから、私が仮面をとれるようになったのは結構年をとってからなんですよ。」

田中「素敵な思い出ですね。ちなみに、先程お話の中で、「仮面をとる研修」という言葉が出てきたと思います。それはどのようなものなのでしょうか。」

小杉「これは、今私のゼミでも同じことをやるのですが、一つのプログラムです。でも、心理学の専門家からすると、仮面をとるのは危険だとも言われています。よっぽどの信頼関係があって、あとからフォローできないといけませんので。」

田中「それだけ、研修の力は強いというか、外から与えられる力って大きいものがあるんですね。」

小杉「研修の力は大きいですね。私も研修をやりますし、授業もある意味研修ともいえます。だから一つ一つ大切にしています。ただ、例えば仮面をとる研修というときも、問題はそのやり方をどうするかなんですよね。自分が仮面をかぶっているということを、いかに思い知らせるかっていう状況設定をすることになります。詳細はさきほど言ったように信頼が必要なので詳しく言えないのですが。」

田中「それを、仮面をとる研修に参加できない学生にも是非伝えたいのですが、どう伝えれば…」

小杉「そうですよね、ごめんなさい(笑)例えばこう考えてください。仮面をかぶっている自分と、そうでない自分、要するに親しい人といる開放されている状態と、どう違うのか。仮面をかぶっていることで何を得ていますか、何を失っていますか。逆にとったとしたら何を得て、何を失いますか、ということをぜひ想像してみてください。そもそも仮面をかぶっているのか、かぶっていないのか。かぶっているとしたらどんな仮面なのか。それを知らないと、わからないので。まずはそれが第一歩だと思います。それで、あなたは仮面をとりますか、とりませんか、どうしますか?ということです。」

-小杉先生にお話を聞いていて、言葉の中から滲み出る「強さ」のようなものを感じた。それは、小杉先生がこれまでに経験してきたことがあるからこそ、感じられるのだろうなと思う。これまで厳しい環境の中で得てきた経験によって、ありのままの自分というもののレベルを高めてきたのだろう。では、小杉先生が語る「自分自身を高める」とは、どういうことなのか-

◆成長する学生とは

田中「では、自分自身を高めるということは、どういうことなのか、教えてください。」

小杉「そもそも人間というのは、死ぬまで成長していくと思います。たとえ肉体は衰えても、精神的には成長していかないといけない。やめちゃうと人間として朽ちていくのではないでしょうか。成長とは何かというと、自分の将来なりたいイメージをもって、そのためにいろんな人から学ぶとか、話を聞いて吸収しようとすることによって起こるもの。それでまた、自分の中で考えが変わっていくことってありますよね。それがなくなってしまったら、人生が面白くないと思います。

どこまでも精神的に成長していって、成熟していくと、世の中をよりいろんな見方で見られるようになります。そうすると年をとることも悪くないと思えるのではないでしょうか。このように意識している人は魅力的になっていくと思います。」

田中「先生自身は、現在どんなことを高めようとしているんですか?」

小杉「刺激はいつも受けようとしていますよ。例えば最近は、頻繁にお芝居を観に行っています(笑)。4時間出ずっぱりで、前でやっている役者のエネルギーってすごいですよ。それだけでも吸収できます。」

田中「映画と全然違いますよね。」

小杉「全然違いますよ。研修は3日間連続ですることなどもあるんですが、一人で喋り通すわけですよね。いかに観客である受講生を巻き込むのかという面で、基本的にはお芝居と一緒なんです。どう惹きつけるのか、エネルギーをどう出すのか、ものすごく勉強になります。」

田中「日頃から、先生自身もたくさんのことを吸収されているんですね。自分自身を高めようとすることが大切だと思うんですが、どのように自分を高めていけばいいのでしょう。また、先生が考える優秀な学生とは、どのような学生だと思いますか?」

小杉「吸収しようとしている学生、かな。人の話を聞いて、理解して、反応する。社会人でも、どれだけの人ができているかわからないですね。そのためには先ほどの「仮面をとる」ということがとても大切なんです。仮面を被っていると、どうしてもバイアスがかかってしまって、自分の都合のいいように解釈しちゃいがちですから。それができている人は優秀と言えると思います。なぜなら、吸収することができる、人の言うことが理解できて、反応できるということは、その時点で成長していますから。その繰り返しなんだと思います。」

◆編集後記

インタビューには、記事には載せきれないことがたくさんあるのですが、もう一つ心に残ったことがあります。「これから必要とされるとされる人材は「自律した人間」。ここでの「自律」は、言われたことを一人前にできる「自立」とは違い、自分の役割をこなすだけではなく、自分で提案して、自分で動いて、責任をとろうとする「自律」です。」
インターネットが普及し様々な情報が飛び交っている現代では、上司も周りの社員もみな、今まで経験してきたことがないことが起こりえます。そういう意味では誰も正解を持っていない。だから、あたりまえですが、自分で考え、自分で動き、責任をとろうとする<自律>が求められているのではないでしょうか。「自分一人の時は、高みを目指して絶えず努力する、しかし人と接するときは、その時点のそのままの自分であり続ける」私自身、そのような人であり続けたい、と強く感じたインタビューでした。

(記事作成:田中嘉   記事編集: 田中嘉 )

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