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Google日本法人元社長、現アレックス株式会社社長、辻野 晃一郎さんインタビュー

「新しい時代を切り開くには、大学生は何から始めれば良いのか」

記事作成:   記事編集: 松村莉奈 | Future |2013.06.18

それまでの世界からは想像もつかないものを考え、世の中に革命を起こす人たち。読者のみなさんも偉大な先人の行動を知り、そのアイデアに心奪われる瞬間があるだろう。そんな世の中に革命を起こす人の共通点とは―

「みんな遠くの一点を見ているんです。これから10年後20年後、こうなるんじゃないかというイメージがあってそこと現実を見比べている。そこから逆算して生き方を考えるんです。だから大切なのは遠くの一点を想像する力なんです。」
インターネットという、「世界を除く魔法の窓」を手に入れた私たちは、これからこの恵まれた環境をどのように生かしていけるのだろうか。ソニー時代を経てgoogle日本法人代表を経験。現在は自らが立ち上げたアレックス株式会社を指揮するなど、常に新しい時代へ力強く挑戦してきた辻野氏へのインタビューから、この問いを紐解きたい。この記事そのものを映しているスマートフォンやパソコンに触れながら、今一度考えてほしい。
この時代に生まれた、あなたの可能性について

Google元社長 現アレックス株式会社社長

辻野 晃一郎(つじの こういちろう)

1957年に福岡県北九州市に生まれる。 慶應義塾大学工学部卒業。84年慶應義塾大学大学院工学研究科を修了後、ソニー株式会社に入社。2006年にソニーを退社。07年にGoogleに入社、09年にはGoogle日本法人の代表取締役社長を務める。10年にGoogleを退社し、アレックス株式会社を設立。11年ALEXCIOUS(アレクシャス)をオープン。トップを走り新しい時代へ力強く挑戦してきた。著書に「Googleで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた」(新潮社、新潮文庫)。

学生インタビュアー

田中 嘉(たなか よしみ)

日本インタビュアー協会認定インタビュアー。
1991年、東京で双子として生まれる。6歳より能を始め、宝生流仕舞課程を修了。高校時代にオーストラリア、イギリスブライトン、ケンブリッジへの留学を経てKEAOSを設立。小学生を対象としたコミュニケーション教育活動を行う。その後慶應義塾大学環境情報学部に入学。翌年、本質を考える対話コミュニティCreNate設立。インターン先での取材をきっかけに、ライフワークとして行っていたインタビューを本気でやることを決意。認定インタビュアー資格を取得する。これまでに囲碁棋士、デザイナー、職人、世界的企業の社長、芸能人やホストまで60人ほどの記事を作成し発信。2012年に日本インタビュアー協会広報課長として、インタビューの普及活動をしている。
@Josh_yoshimi
HP:http://yoshimi1230.wordpress.com/

辻野1

ただの妄想でもいい、描け

―「辻野さんは常に新しいことに挑戦していらっしゃいますね。そのような変化が激しい第一線にいて感じる、これからの時代を切り開き、自分から大きな変化を起こしていく力はどのような力だと考えますか。」

辻野「実はいままで大きな変化を起こしてきた人に共通しているものがあるんです。坂本竜馬もスティーブ・ジョブズもキング牧師も、みんな遠くの一点を見ているんです。これから10年後20年後、こうなるんじゃないかというイメージがあって、その想像の世界と現実を見比べている。そして、そこから逆算して生き方を考えることができるんです。つまり、自分が大事だと思う遠くの一点を実現するために、今こういう生き方をすべきだと演繹的に考えて行動しているんです。だから大切なのは遠くの一点を想像する力なんです。
まぁ普通の人は眼の前のことに対して一生懸命なので、なかなか遠くを見ることはできないんですけどね。」

―「その想像は現実的でなくてもいいのでしょうか…ただの妄想家では未来につながる行動にはたどり着けないようにも思うのですが…」

辻野「私はただの妄想でもいいと思います。必ずしもその妄想に明確な根拠は必要ありません。私たちがふと思う、「こうなったら面白いな」「こうなるだろうな」という妄想は、それぞれの人の体験や経験といった言葉にできない知識が根拠となって生まれてくることも多いと思います。もちろん、ちゃんとした統計データを基に妄想することも大切ですが、
自分の経験や知識から生まれてくる妄想というのは自分だけの妄想であり、その妄想には大いなる可能性と価値があると思います。」

―「妄想、ですか。想像とはどう違うのでしょうか?」

辻野:そうですね。言葉の意味上、特に区別はないとも思いますが…私は、妄想は想像の「さらに先にあるもの」だと思います。想像を積み重ねて現在のずっと先を見ている。一見すると現実とつながっていないように見えて、遠くの一点を見ている人には、そこにたどり着く道のりもわかっている。そういう将来を描くことが妄想でしょう。

辻野2

現場を感じて、想像する力を伸ばせ

―「詳しく伺いたいです。そのような妄想力を得るためには、どのような力を身に付けなければならないのでしょうか」

辻野「いろんな人と会った方がいいですね。日本人だけじゃないし、学生だけじゃないし、いろんな人たちですよね。それとやっぱり「現場を見る」ということに尽きます。旅行でもいいのでいけるときに海外でも国内でも、自分がいつもいるのとは違う場所に行ってみるってすごく大事だと思うんです。人間って「妄想力」や「想像力」をどうやって磨いてくか大事。今この世にあるものって、すべて、最初は誰かの妄想や想像から始まっている。誰かのイメージがこの世を作ってる。すべてがそうです。戦争やテロも含めて最初はたった一人の誰かの憎しみとか怒りとか、頭の中での妄想が引き起こしている。だからいろんなところに出かけて、人と話して、やってみて、自分の「想像力」を磨いていく。もちろん世の中を良くしたり進歩させたり人類に貢献する為の想像力や妄想が大切です。」

―「なるほど…とはいっても、人に会ったり、本を読んだり行動したりしている人はたくさんいるのかなとも思います。その人たちと、妄想を革命的に現実化してきた人、例えばイーロン・マスクのような人たちとはどのような違いがあるのでしょうか?」

辻野「人間一人一人違う生き物ですからね。ですがやはりイーロン・マスクのような人は偉大な「妄想家」だと思います。大学生の時に、これからの人類に必要なものはなにか、について深く考え抜いて、他の人ならブログに書いて終わり…みたいなことを現実のものにした。別に大企業がやったわけじゃない。たった一人の起業家がやってるんですよ。そしてアメリカでは面白いこと考えている個人に大金を出してくれる人がいる。でも日本はなかなかそういうことがなくて、そういう妄想をする人も少なし、妄想にお金を出す資産家もいない。リスクを毛嫌いして出る杭を打つところがある。みなさんくらいの人も就活就活とか言って、親が勧めるような大企業に入りたがるでしょう?それはある意味、妄想力が足りないことで自分の可能性を狭めている事例の一つだと思います。」

辻野3

ネットネイティブの恩恵をどう使うか

―「では、そのような妄想力が必要なこれからの未来は、どのような時代になっていくと思われますか?著書の中に「ボーダーレスな地球」という言葉が出てきて、とても面白い表現だと思いました。」

辻野「まず過去のことからお話しすると、僕が子供の頃やみなさんくらいの年の頃、インターネットはなかったんです。影も形もなくてね。源流と言われているのがアメリカの軍事用アーパネットなんだけど、一般で使われるなんて言うのは全く想定もないし技術もなかった。だからインターネットがなかった世代と、ネットネイティブとして当たり前にインターネットを使っている世代。ここにある「格差」というのはすごいんですよ。今や地球の人口の70億人のうち24億人はネットに繋がっていると言われている。Facebookだけでも11億人いるって言われてますよね。僕にはもうひとつの地球がはっきりイメージできるんです。時間差なしにボーダーレスに世界がつながっている。基本的には国と国を隔てるボーダーみたいなものは存在しない。そんな地球です。」

―「なるほど。では「今までの地球」と「ボーダーレスな地球」、私たちにとってはどんな違いがあるのでしょうか。」

辻野「そうですね。一番の違いは他人事っていうものがなくなっていくことだと思います。
インターネットがなかった時代は、遠いところで起きてる他人事みたいな感覚だったものが、現代だと、次の瞬間自分事になっている。これはいろいろなとらえ方があると思うけど、僕はすごく恵まれていると思うんですよ。GoogleやAmazonが作ってくれたインフラを、僕たちは基本タダで使用している。インターネットが後付の僕から言わせてもらえば、もしこの時代をみなさんの年齢で過ごすことができていたら、と思うと本当にうらやましい。なんと素晴らしい時代だろうと思う。だから解放されているテクノロジーの力を駆使してスケールの大きなことを思い切ってやっていくということがとても重要だと思う。
さっき妄想力が重要といったのは、テクノロジーの力を使うことで、妄想が現実化しやすくなったということも関係してきます。他のどの時代よりも今が、妄想を現実に変換しやすい時代なんです。」

―「なるほど。しかし、恩恵を受けていると言われても、なかなかその恩恵を実感することは難しいのですが…」

辻野「そうですね。例えば、みなさんも使っているスマートフォン、これは繋がりあう世界を覗く窓だと思うんです。これって僕らの時代には考えられないんですよ。魔法のディバイスを手に入れてるんです。そしてインターネットの先には必ず「人」がいる。発想があっても閉じていてはなにも起きない。自分のアイデアを人と繋げて知恵とか時間とかお金とかを借りてやりたいことをやる。そういうオープンなスタイルができていくことだと思います。そういうふうにインターネット時代の恩恵をフルに使おうとするか、そうじゃないのか、は大きな差になると思います。」

―「でもオープンになっていくと競争の激化が進んでいくんじゃないですか?せっかく、自分で独創的なアイデアを作ったのにほかの人にアイデアを取られたりするリスクも高まるのではないでしょうか」

辻野「知的財産の価値、初めてアイデアを出した人の価値は守られていくべきです。でも一方でほかの人とアイデアを出し合って速く新しいものが開発されることがインターネットの力でもある。ここは相いれない部分もあるかもしれません。どちらの立場をとるかということだと思います。例えば昔のソニーのような会社は定期的に「特許キャンペーン」をやって、技術者に特許申請を促して権利確保を促進していました。でもGoogleではそういうのはなくて、速く動いてその追随を許さないようにしていく。アンドロイドの中身はクローズドに作っているけれど、それを一般に解放して誰もが使えるようにしたからあっという間に世界に広がったんです。無償で誰もが使えるようにオープンにして世界を席巻した。そのオープン性の価値を比べると知財を守って利益源にするより、オープンにして市場を素早く開拓していく方が今風だと思います。」

―「しかし、日本人にはそんな厳しい競争に勝ち抜く力があるのでしょうか。他の国に比べると日本から生まれ、妄想を現実に変換できた事例というのは少ないような気がしますが…」

辻野「昔、日本に爆弾が投下されて戦争に負けて国として立ち直れないような時に、たった二人の日本人が創業した企業がありました。それがソニーなんです。たった一代で売り上げ8兆円以上の世界企業を作り上げた。盛田さんや井深さんは日本だけではなく世界中から尊敬されるビジネスマンでありエンジニアだった。そんな時代にそれだけのことが日本人にできたのに、今の時代の日本人にそれを凌ぐことができないはずがない。だけど残念ながら今の日本人は現状に満足してしまってハングリー精神を失っていると思います。守りに入って保守的になってるんですよ。だから、僕は自分の役割としては、若い人たちにもっとチャレンジするように、熱心に呼びかけることだと思っています。実際に、自分自身もチャレンジし続ける人生を送りたいと思っています。」

―「辻野さんが現在社長をやっていらっしゃる「ALEX」もその一つですね」

辻野「よく言われますよ。なんでまだそんなことやってるんだ。もっと楽な道があっただろうってね。(笑)大きなお世話だっていうんですよ。(笑)」

辻野4

世代を超えたコラボレーションとは

―「では、そのような環境の変化を踏まえて、若者が今すぐにでもやったほうがいいことはなんだと思いますか?」

辻野「世代を超えてのコラボレーションですかね。今の若者だって素晴らしい人はいっぱいいるんですよ。行動してる若者も確実にいるじゃないですか。僕はちょうど皆さんと同じ年齢の息子がいるんです。僕の父はとても高圧的で、頭を押さえつけるような人だった。その反動もあってなるべく息子には自由奔放に育って欲しいと願って来ました。そうするといっぱしのことをいつの間にか言うようになってる。いろんなことを考えていて、大学生活に対してもすごく問題意識をもって過ごしている。彼なりにもがき苦しんでいて、何か答えを見つけようと必死になっているんでしょうね。そういう彼の話を聞くことで、僕自身にすごく刺激があるんですよ。友達もつれてきて、友達同士で話してる時に僕は割って入って話したりするんです(笑)。そうすると自分にできる範囲で応援したりサポートしたりしたくなる。
そうやって世代を超えたコラボレーションが広がっていけばいいと思うし、日本はそれが少し弱いと思います。コミュニティーが世代ごとに縦割りになってしまっていて、対等な付き合いがない。僕が今関わっている人の中で一番若い人だと中学生、最高齢の人は85歳の人です。縦のつながりから得られるものはとても大きいですよ。」

―「私たちもアメリカ人と日本人といった地域の枠組みだけでなく、世代や分野を超えてチームを組めるという要素(詳しくはこちらhttp://gipj.net/about/)はこれからの人材に必要だと思っているので、とても共感します.」

辻野「そうですね。若い人たちから教えられることって本当に多いんですよ。LINEとかも若い人に教わるから楽しいんですよ。でも使ってるうちに「意外とスタンプだけのコミュニケーションってありだな。」みたいに思えたりするんだよね(笑)やっぱりそういうのって、ネイティブの感覚で使ってる人からしか教えてもらえないですよね。もちろん、僕ら世代が若者から教えてもらえること以上に、僕らからも教えられることはたくさんあります。なので、是非今の若者には、地域だけではなく世代を超えてチームを組んでほしいですね。」

辻野5

何のために生きるのか。求め続けろ。

―「最後に、学生につぶやきたい、ささやきたいことはありますか?」

辻野「スティーブ・ジョブズも言ってるけど“keep looking”つまり自分が何のためにこの世に生まれてきて、何がやりたいのか。求め続けろ。妥協するなということです。大体の人がどこかで折り合いをつけてしまう。就職、昇進、結婚、子供ができると、俺の人生もそこそこ幸せだしこんなところでどうだろう、と妥協して、折り合いつけちゃう。そうじゃなくて、今の生き方は本当に自分が欲しているものなのか求め続けるというのが大切なんじゃないですかね。
あとはそうだね。
「あまり優等生にならないこと」かな。親のいうこととか先生の言うこととか謙虚に聞くのはもちろん大事だけど、それは自分でない誰かの意見であってアドバイスを聞くのは大事だけど、最後に決めるのは自分だっていうことを意識することだと思います。あまり従順にならずに、時には反発もあるかもしれないけど、自分がこの道だと思ったら自分を信じてそっちに行くべきだと思います。」

(写真撮影:杉田なお)

(記事作成:   記事編集: 松村莉奈 )

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