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IMD日本代表 高津 尚志さんインタビュー

グローバル化は脅威じゃない!?「楽しいグローバル化のすゝめ」

記事作成: 鳥越幹大   記事編集: 田中嘉 | Global |2013.07.02

「グローバル化は脅威ではない。」
今日、私たちはグローバル化を「備えなければならないこと」として捉えていないだろうか。仕方なしに英語を学習しようとしたものの、書店に置かれた大量の参考書を前にして圧倒されてしまったといった経験を持つ人も少なくないかもしれない。しかし、本当にそれでいいのだろうか。
「グローバル化はとても楽しいことなんです。」高津氏は笑顔でこう語ってくれた。「グローバル化」が「楽しい」。あまり聞き慣れないふたつの言葉の組み合わせだが、高津氏はごく自然にこの表現をする。その背景にあるのが、「人間は国境や国籍ではなく、『人と人』として繋がることが出来る」という感覚だ。
「人間、根っこは同じだと思うんです。」という高津氏の想いはどこから湧き出てくるのか、そして、私たち自身がグローバル化を楽しむために必要な力とは何か。
世界を股にかけて活躍する一流が、クールに熱く語ってくれた。

IMD 日本代表

高津 尚志(たかつ なおし)

IMD日本代表。1965年生まれ。愛知県出身。高校時代にAFS奨学生としてカナダに留学。早稲田大学政治経済学部を卒業した後、フランスの経営大学院INSEADとESCPで学ぶ。日本興業銀行、ボストンコンサルティンググループ、リクルートを経て、2010年11月より現職。世界を股にかけて活躍する一方で、一児のパパの顔も持つ。主な著書に「なぜ、日本企業は『グローバル化』でつまずくのか‐世界の先進企業に学ぶリーダー育成法‐」(ドミニク・テュルパン氏と共著、日本経済新聞出版社)、「ハイブリッドに考える思考の技法」(かんき出版)があ

学生インタビュアー

鳥越 幹大(とりごえ みきひろ)

東京大学教育学部在学中。1991年生まれ。東京都出身。トモノカイgi人材プロジェクトインタビュアー。高校時代1人の女の子に告白し振られ続けた経験から「人って何考えてるかわかんない!」と発狂。人間についてもって知りたいという思いから、「話を聞く」ことに対して興味を抱くようになる。本稿は本格的にインタビューを行った最初の記事。ちなみに一番の友達は自宅のネコ。

グローバル化は脅威ではない。楽しいものだ。

―「世界で活躍されている高津さんですが、海外に目を向けるようになったきっかけはありますか」

高津「私が中高生だったころは、ポパイという雑誌が創刊した頃で、その雑誌ではウエストコーストの文化が紹介されていました。また、ジョンマッケンローというテニス選手が活躍していて、私自身も彼が履くナイキの靴に憧れていたように、今より「アメリカがカッコイイ」と思う時代でしたね。その時代の若者なら誰しもそうだったのかもしれませんが、そういった文化に対する憧れから、世界に目を向けていったように思います。」

―「なるほど。今はグローバル化と声高に言われていて、ある意味無理にでも世界へ目を向けることが求められていますが、そういう強制力はなかったのですね。」

高津「そうですね。そもそもその時代は「グローバル」という言葉がなく、二国間の関係を意味する「国際化」と呼ばれていましたが、強制されたものというニュアンスはありませんでした。私にとって外国の人と喋ったりつながったり気持ちが通い合ったりするのはとてもワクワクすることで、その意味で国際化やグローバル化はとても楽しいものだと今でも思っています。」

―「グローバル化が楽しいというのは新しい表現ですね」

高津「それはとても重要なことではないでしょうか。いま日本では、『グローバル化だから英語が出来なくては』『グローバル化で仕事が奪われるかも」といったように、グローバル化がある種の脅威であり、備えるべきものとしてとらえられています。しかし、例えばインドの人びとはグローバル化をとても歓迎しているんですね。それはなぜかというと、グローバル化に夢がついてきているからです。グローバル化で自分たちのところに仕事が来るかもしれない、今までできなかった海外旅行が出来るかもしれないといったように、非常にポジティブに受け入れています。それは考え方の違いではありますが、地球上に生まれ世界中の人々と何かを一緒に作っていけるということは、本来ワクワクするようなことではないでしょうか。」

高津1

人間、根っこでは同じ

―「自分もグローバル化に対しては備えなければという気持ちが強いかもしれません。そのような考え方を変えたいと思ったら、何をすればいいのでしょうか」

高津「どんどん若いうちから外国の人と遊ぶことですね。野球を観にいくでも一緒にインターネットビジネスを立ち上げるでも何でも構いませんが、人間として違いもあるけど基本的には同じだよね、と感じる経験が出来るといいと思います。基本的にはグローバル化は楽しいことですから。好奇心があれば、外国の今まで見たことも聞いたこともなかったものを感じることが出来る。それはとても豊かなことですよね。それをもっと円滑に楽しむために言葉が必要なのはある意味仕方のないことだし、新しい言葉を使っていろんな人と話が出来たり自分を新しく表現できるようになるのも楽しいことだと思います。そういう交流を通じて、『あぁ人間って根っこでは同じだよね。だけどいろいろ違いもあって面白いよね』というように思う人が増えたらいいですよね。」

高津2

「人と人」がつながるということ

―「高津さんご自身が『根っこは同じだな』と感じた経験はありますか」

高津「例えば最近だと、久しぶりに会ったフランス人とお寿司を食べながら話した時のことなんですが、家族を思う気持ちや老眼になって眼が見にくいといったネタなど、共通なことがたくさんあるんです。悩みを相談すれば、自分の経験を踏まえてアドバイスをくれるし、そういう時って相手がどこの国の人だとかはもはや関係がなくて、人と人として心が通じ合う瞬間だと思います。学生なら、就職の悩みでもいいし恋の相談でもいいし、みなさんが持っている悩みは別に『日本人だからあるもの』というわけではないかもしれません。そういう話をしていくと、国境や国籍でなく人と人として繋がっていけるのだと思います。」

―「『人と人として』というのは具体的にどういうことでしょう」

高津「単に情報レベルやビジネスレベルでの付き合いではなく、気持ちが通い合うということです。例えば私は大学時代、外務省の外郭団体で通訳とガイドのアルバイトをしていて、海外の要人を京都奈良や歌舞伎に案内するといったことをしていました。そのとき出会った大人の方々は立派な人が多く、自分の知らない世界をたくさん教えてくれましたが、一方で、1人のおじさんと1人の若者という生身の人間同士の関係で、悩みを聞いてもらったりアドバイスをもらったりということも出来ました。振り返ってみると、学生時代のそういった経験から、外国の人とも「人と人」として繋がりあえるんだなという感覚が芽生えたのだと思います。」

高津3

グローバル化は、個人が試される場でもある。

「なるほど。ここまで主に共通点に関してお話していただきましたが、逆にここは国によって違いがあるなと思ったことは…」

高津「もちろんあります。けれど、ここが国際化とグローバル化の違いでもあるんですが、例えば国際化の文脈でアメリカと日本という2つの国のやりとりをしていると、必ず2つの国の文化の比較になって、アメリカ人はプレゼンテーションが上手だから日本人も取り入れていこうといったように、どちらかがどちらかに合わせていくといったことも生じてきますよね。それ自体が悪いことではないんですが、グローバル化になると、多様な国籍の人々が同じ場に集まる中で、ある1つの文化と自分たちの文化を比較することは意味をなさなくなり、1人1人の個性の問題になってきます。個人として『君はどう考えているんだ』という話なので、自分が試され成長できる面白い場だなと思います。面白いと思いませんか?」

高津4

相手への好奇心から全てが始まる

「面白いですが、難しいなとも思ってしまいます…」

高津「簡単であるとは言っていません。けれど、難しいからつまらないとか、難しいから苦痛というわけでは必ずしもなく、難しさの中にも楽しさ面白さがあるのではないでしょうか。」

「たしかにそうかもしれませんね。では、そういった中、実際に世界で活躍するうえで必要な力に一つ名前を付けるとしたらどのようなものになるでしょうか」

高津「そうですね、共感力や想像力など様々な力が必要になってきますが、すべて煎じつめて何が大切なのと聞かれたら、好奇心だと思います。相手のことを知りたい理解したいという思いがなければ、そこから先なにも起こりませんから。好奇心を持ち続けることは、文化を越えて働くグローバル人材になくてはならないものであり、また、ドキドキワクワクすることが人を成長させていくのだと思います。」

高津5

まずは勉強。そこから自分の持ち味を出そう。

「では最後に、学生に向けてメッセージをお願いします。」

高津「大学生の方は、おそらくこれから少なくとも50年は働くことになると思います。しかし、何かの仕事を始めたとして、社会がどんどん変化していく中で、その仕事をやり続けていればいつまでもお客さんがいるとは限らない。その仕事自体もレベルアップしていかなければならない。そうなると、自らを進化させ成長させる力が一番大切になってきます。進化をしていくためには、きちんと勉強することが必要です。それは、本を読むことであり、学校へ行くことであり、人と話すことでもあります。あとは、どんどん自分に様々なものを取り入れていくという考え方をしてください。様々な要素の掛け合わせが自分の持ち味を作り、自分にしか出来ないモノが生まれてくると思います。ぜひ、好奇心を持ってたくさん勉強し、多くの知識や刺激を吸収し続けてください。」

(記事作成:鳥越幹大   記事編集: 田中嘉 )

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