記事であなたの可能性が広がる ~学生のための記事・イベント配信サイト~

編集者 徳瑠里香さん インタビュー

記事作成: 何 遥   記事編集: 和田有紀子 | Future |2015.02.20

現在はフリーランスの編集者として講談社の『現代ビジネス 』(http://gendai.ismedia.jp/) に席を置いていらっしゃる徳さん。元々出版社ディスカバー・トゥエンティワンで編集者として2012年8月に「U25 Survival Manual Series」( http://univ25.jp/)(以下、U25シリーズ)を創刊されました。その後、2013年8月に独立。しかし、媒体が変わっても編集者として人と人をつなげるという役目は変わらないと言います。

編集者・ライター

徳 瑠里香(とく るりか)

編集者・ライター。1987年生まれ、慶應義塾大学法学部政治学科卒。
(株)ディスカヴァー・トゥエンティワンにて、「U25 SURVIVAL MANUAL SERIES」 ( http://univ25.jp/) 創刊、10冊を企画編集。
その後、独立。主に、講談社「現代ビジネス」(http://gendai.ismedia.jp/) にて、企画編集・ライティングを行う。
世界経済フォーラムGlobal Shapers 2014 選出。

学生インタビュアー

何 遥(か はるか)

早稲田大学2年生。現在カリフォルニア大学バークレー校で心理学を勉強している。
特に、子どもの感情的発達・社会性の発達に強い関心を持っている。
大学1年時にU25サバイバルシリーズに出会い、シリーズの創刊者である徳さんにインタビューを依頼。

徳さん2
(U25シリーズ)

「新卒でディスカバー・トゥエンティワンという出版社に入り、1年目は営業を担当しました。普通、出版社は“取次”と言って間に流通業者を入れて本を書店に卸すのですが、ディスカヴァーは取次を通さないということもあって、1年間金沢を中心に北陸三県の書店を回って、オリジナルのポップを作ったりしていました」

そこで徳さんが感じたのは、どんなによい本でも一冊の本を読者に届けるということはとても難しいということ。これが23歳のときに、徳さんがU25シリーズを創刊するきっかけにもなったのです。

「入社2年目で編集部に異動になり、誰にどんな本を届けたいかを考えたときに、同世代の25歳以下の若者に、働き方や生き方の様々な選択肢を伝えていこうという結論に至りました。当時、入社3年目くらいの友人たちが自分の働き方に不安を抱き、悩み始めていました。なぜかと考えてみると、身近になかなかロールモデルがいないから。だったら、本を通じて読者と、その一歩先を行く先輩である著者をつないでいきたいと思ったのがシリーズ創刊のきっかけです。また、読者に届けるという点では、単著ではなくシリーズで、本だけではなくWEBやSNS、イベントなどにも挑戦していきたいと思いました」

U25シリーズを創刊し10冊を企画編集した後、現在はフリーランスの編集者として講談社の「現代ビジネス」に所属する徳さん。

「本でもイベントでも、手段は問わずに著者の魅力やメッセージを伝える道筋を作るのが編集者の仕事だと思っています。そういう意味では、会社や媒体は変わっても、編集者として潜在的に問題意識を持って悩んでいる人と、その一歩先をいく著者の方や詳しい人をつなげる役目は変わりません。私は今、フリーランスとして講談社の現代ビジネスに席を置いていますが、U25シリーズの編集もゆるやかに続けています。例えば、このシリーズの最新刊の著者であるネパールの女性起業家向田麻衣さんには現代ビジネスでも連載を書いていただいていますし、イベントの開催もしています。伝える手段は色々。人と人をつなげていきたいという想いのもと、やっていることは変わりません

徳さん3
( U25シリーズ『“美しい瞬間“を生きる』の打ち合せ。著者の向田麻衣さんと)

■編集者を目指したきっかけ

この『つなげる』という役目を持つ編集者を目指すことにした大きなきっかけは大学時代に経験した助産院の取材だったという。

「高校生の頃から、青春18切符で旅をして地元の人に話を聞いたり、図書券が欲しくて新聞に投書をしたりしていて、なんとなくメディアに関わる仕事に漠然と興味を持っていました。でも決定的だったのは、大学時代に経験した助産院の取材です。自分一人で助産院に通って取材をしたのですが、これがとにかく楽しかった。また、その助産院の先生がとにかく素敵で。こんな自然な形で命が生まれるということにびっくりして、その空気感を伝えたいと強く思いました

そして、この取材で書いた記事が思いもよらない形で身近な人に影響を与えることになったのです。

「スキルもなければ掲載する媒体もないのに、助産院に通って、写真を撮って、聞いた話をノートにメモして、勝手に原稿を書いて。それがあるきっかけで雑誌に載り、これを見た妹が影響されて看護師を目指すことになったのです。このとき、自分が伝えることで人が動くきっかけを与えられるということに感激し、この道に進みたいと思いました」

■やりたいことが定まらない学生へ

編集者という目標に向かってまっすぐ突き進んでいたように見えるも実はそうでもなかったと語る徳さん。

「これ!という風に解決したい社会問題がある人や、将来やりたいことがはっきりと決まっている人たちはすごいと思っていました。例えば部活動でいえば、小学生でバスケ、中学生でバレー、高校ではハンドボールに写真部、それで生徒会や文化祭実行委員にまで手を出す……。小さい頃から、あれもやりたいこれもやりたい、となかなかひとつに定まらない子でした」

しかし、何か一つ極めることがないこと自体が強みになり得ると言います。

「でも今は、だからこそできる仕事がある、と思っています。例えば、私は編集者として、これを成し遂げたいと思っている人の活動や想い、一つのことを極めている人の考え方やノウハウを伝えていますが、これはいろいろなことに興味があり、外側にいる私だからこそできることだと思っています。様々な人の人生や世界の出来事を垣間見ることができる編集の仕事が、自分には合っているのだと感じます。やりたいことが一つに絞れないことに悲観的にならずに、興味に従って自分の世界をどんどん広げて行くのも選択肢の一つだと思います」

■すべてが中途半端にならないために

そんなやりたいことが定まらない学生へ、すべてが中途半端にならないために行ったらよいという徳さんからのアドバイスは、小さな「楽しい」「いいな」と思う瞬間を大切にすること。

「きっとその多くの興味の中に、心底やりたいことがあるはずです。それは“何をしているときが自分は一番楽しいか”を考えると見えてくるかもしれません。私はこれを考えたとき、本を読んだり、人の話を聞くことが好きだなと感じていたし、学生時代に自分で記事を書いたことがとにかく楽しかった。はじめからこれだ!と思ったわけではないし、今も迷ったりもするけれど、日々小さくても“心地いいな”と思う瞬間を積み重ねていくようにしています。こうして自分が選んだ一つのことを軸にしていくことが大切です」

「それに、軸を持ちながら、多くのことに興味を持つことができれば、人と違った、オリジナルが生まれると思います。たった一つの分野で抜きん出るのは難しいけれど、そこに他の強みを掛け合わせると、思ってもみなかった新しい価値が生まれる。また、様々な立場の視点を知ることで大きな器を持つこともできるかもしれない。だから、一つに絞れないこと、言い換えれば学生時代にやりたいことがたくさんあることは、すごく素敵なことだと思いますよ」

■最後は自分が決めちゃうかどうか

そして、もう一つ大切なのが、素直な気持ちに従って『自分で決める』ということ。

「多様な著者の方と接していて思うのは、やりたい!と思うことに素直になって、これをやる!という決断をしている、ということです。レベルの差はありますが、私もU25シリーズを創刊してから月1冊ペースで本を作っていたので、当時はとにかくがむしゃらで、友達にもなかなか会えず心配されていました(笑)。でも、自分がそのときやりたいと思ったことに素直に従っただけなんです。自分で決めたことなら本気で取り組めるし、大変なことでもやってよかったと思える。なにが正しいかわからないので、自分で決めちゃうことが大事なんだと思います」

■自分の意志を持ちながら社会の波に乗ること
徳さん4
(U25最新刊「“美しい瞬間を生きる”」の出版記念イベントで)

「自分の意思を持ちながらも、一方でタイミングを見て流れに乗ることも重要なのではないかと思っています。仕事としてやるのであれば、自分がやりたいことだけでなく、それを世の中のニーズとすり合わせていく必要があります。例えば、私はシリーズ創刊時、自分がそこ(ディスカバー21)でできる最大限のことは何かを考えることから始めました。当時編集部には20代の編集者がいなかったので、経験もスキルもない自分の唯一の強みになる20代リアルな視点を企画に反映しようと思ったのです。また、このシリーズの読者へのアプローチ方法として、ウェブやSNSでの拡散やイベントを企画したのも、情報を得る手段が本だけでなく、モバイルの普及など時代の変化があるからです。自分の視点と会社や時代のニーズを掛け合わせるほうが、よりインパクトが大きくなっていくと思います」

「キャリアの選択も同じこと。私が独立したのは、編集者の仕事の形や働き方が変わってくるなかで、本だけでなくWEBやそのほかのことにも挑戦したいと思っていたタイミングで、今の編集長に声をかけてもらったことが大きいです。だから大事なのは自分の軸を持ちつつ、ある程度流されるということかな」

■学生みんなに伝えたいこと

―就活も自分の世界を広げる手段としてみる。

就活はとても貴重な経験です。いろいろな会社で働く人に話を聞けるなんてこれからめったにありません。私は就職時、業界を絞って受けてしまっていたけれど、もう一回経験できたら、もっとたくさんの会社を見て、色んな仕事をする人に会ってみないな、と思います」

―思っているだけでなく、とりあえずやってみる

「自分の頭で考えて行動をすること。今はいろんな情報や意見に触れる機会が多いけれど、自戒も込めて、それを鵜呑みにしないで、自分の視点で見て感じてほしいと思います。編集者としてコンテンツを通して、読者の方々に考えるきっかけを提供することができても、それ以上のことはできません。ぜひ自分の頭で考えて、行動して、自分の糧にしてもらいたいと思っています」

(記事作成:何 遥   記事編集: 和田有紀子

「いいね!」で、最近の情報をチェック!