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ハーバード卒後、教育の最前線で次世代教育を追い続けるTFJ代表・松田悠介さんが感じる「今の学生に足りないもの」

Teach for Japan代表  松田 悠介さん

記事作成: 伊藤 有理奈   記事編集: 和田有紀子 | Innovation |2014.03.23

今の大学生に必要な「力」を考えるにあたって、今回は教育改革に取り組む松田さんにお話を伺った。教育現場を実際に体験した後、ハーバード大学へ留学し、留学先でTeach For America創設者の講演を聞き、日本でも同様のモデルを立ち上げたいという思いで団体を立ち上げるに至った。教育課題を解決する責任があるという課題意識を強く持った松田さん。彼の原動力はどこから生まれ、どのようにして団体立ち上げに至ったのか。そして教育者の視点から見た、今の学生に必要な「力」とは何なのだろうか。

Teach for Japan代表

松田 悠介(まつだ ゆうすけ)

2006年に日本大学卒業、その後体育科教師として中学校に勤務。体育を英語で教える Sports English のカリキュラムを立案。その後、千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院修士課程(教育リーダーシップ専攻)へ進学し、修士号を取得。卒業後、外資系コンサルティングファームPricewaterhouseCoopers Japan にて人材戦略に従事し、2010年7月に退職。Teach For Japan の創設代表者として現在に至る。日経ビジネス「今年の主役100人」(2014年)に選出。世界経済会議 Global Shapers Community メンバー。 経済産業省「キャリア教育の内容の充実と普及に関する調査委員会」委員。共愛学園前橋国際大学「グローバル人材育成推進事業」外部評価委員。京都大学特任准教授。著書に「グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」(ダイヤモンド社)」。

学生インタビュアー

伊藤 有理奈(いとう ゆりな)

2012年に上京し、翌年インタビュアーとしての活動を始める。現在は、レジデントアシスタントとして、留学生と同じ寮で生活している。

◆これからの時代に必要な力とは?

【インタビュー】TFJ1

伊藤 「松田さんは次世代教育の必要性を唱えていると思うのですが、松田さんが考える『次世代教育』とはどういったものですか」

松田 「これから30、40年後の時代の変化を予測し、そこから逆算して今どのような知識・マインドセット・スキルを子どもたちに準備させる必要があるのかを考えることが教育の使命だと思っています。日本が高度成長を体験していた1960~80年代には、マニュアル型の人材が必要とされていましたが、時代が変わった今でも暗記偏重型の教育が続いていており、「社会」と「教育現場」のギャップが広がってきていると思いますね」

「これからは『イノベーションを起こす力』、『課題解決できる力』、『言語の壁を越えられる力』、『共存していく力』といったものが必要になってくると思います。時代背景を見ればその時代にどういった教育が必要なのかわかります」

伊藤 「なるほど。先ほど、課題解決という言葉があったと思うのですが、課題解決とはどういったことを指すのでしょうか」

松田 「課題解決だけ独り歩きするのは怖いことで、課題解決の前に一歩目として、質の高い『課題設定』が必要になります。課題発見、課題定義が大切だと思っています。正しい問いの設定があれば、答えを導き出すのがスムーズになります。仮説を立て、チャレンジし、ふり返りを大切にしながらPDCAサイクルを繰り返すことで答えが見つかります」

伊藤 「課題設定や課題解決といった力はどうやって身に付けたらよいのでしょうか」

松田「まず、あるべき姿を描くことです。あるべき姿がなければ、どれだけ現状を分析しても課題は見つかりません。あるべき姿があり、そこから現状がどうなのかを考えてみる。現状と理想状態にギャップが生まれているのであれば、そのギャップが課題です。そこからは、適切な課題設定を行い、仮説をたて、理想状態に近づけるチャレンジを繰り返す」

「ここで大切になってくるのが、そもそも理想を描く『意志』や『チャレンジの精神』になってくるでしょう。ここを洗練されたものにするためには、場数を踏むという訓練も効果的です。とにかく一歩を踏み出すこと。チャレンジし続けることによって、常に新しい「問い」がでてきて、PDCAサイクルのスピードを上げていくことで答えを導くまでのスピードが身につくと思います」

伊藤 「最近、フレームワークの本が多く出版されていますが、それについてはどうお考えになりますか」

松田 「すごく違和感がありますね。多くの人がフレームワークを重視していますが、それよりも『チャレンジする意志』や『正しい課題設定』が大切だと考えます。フレームワークはその後に自分で身に着けるくらいの方がいいと思いますね。ただ単にフレームワークに頼るのはよくないと思います」

ポイント

  1. 課題解決よりも先ずは課題設定の力が大切
  2. PDCAサイクルの繰り返しが大切 (※PDCAサイクルとはPlan(計画)Do(実行)Check(検証) Action(改善)の四つの要素からなる。)

◆一歩踏み出すことが大切!

【インタビュー】TFJ2

 伊藤 「Learning For Allを学生向けに開催していると思うのですが、学生向けに行う理由は何でしょうか」

松田 「まず1つは、教師を志している学生にとっては実践力を高めるという意義がありますね。つまり現場に入ってから様々なチャレンジに直面しますが、ここでの対応能力を上げておくことによって、様々な困難を予防しておくことができるのです。もう1つは、教育に対する当事者性を高めるということですね。生活保護を受けている家庭で育っている子どもに向き合うことで考え方が変わります」

「自分がどれだけ恵まれているか、環境によって子どもたちの人生がどれだけ左右されているのかという不条理に気づく。課題意識だけでなく、何とかして改善しなければという当事者意識が生まれる。先生にならなくても、当事者意識ある人が増えれば課題解決するプレイヤーが増えていく。これが大切です。3点目は学生の成長ですね。間違いなく成長するんですよ。課題のある子どもと向き合い課題解決するための準備やチームでディスカッションすることでコミュニケーション力や計画力、リーダーシップが身につきます」

伊藤 「なるほど。学生に求めるものとしてはどういったものがありますか」

松田 「『チャレンジ』するということ。チャレンジの数だけ人は成長します。それともう1つ大切なのは、『自分の境界線を越える』ということ。居心地のいい人と一緒にいるのでは成長もないし、イノベーションも生まれない。多様な人と出会うべきですね。日本人はこれが苦手かもしれない。私は、日本の大学では食堂の状況を見ればその大学の質がわかると思っています。友達と一緒にただただ時間を過ごしている人が多い大学は学生の質は低いと感じるのです。友達と一緒にいるのが楽で、その楽な居心地の良さが蔓延しているということですから」

「そうではなく、学生は普段出会えない人と積極的に出会おうとしたり、興味のない勉強会や会合に出てみたりする方が良いです。そうすれば、『そういう考え方もあるのか!』という発見の連続により、異なる価値観を学び、一段ずつ、成長の階段を上ることができます。周りにいる人と議論を続けたところで、共感のみで終わってしまい、自分の理論を強めたり後押しすることにはなっても、新しい学びや発見はありません。学生は群れずに普段出会わないような人と積極的に出会い、考え、気づき、学び、課題意識があれば頭で考えるとともに、前に一歩先に踏み込みアクションを起こすことが重要だと思います」

ポイント

  1. チャレンジ
  2. 自分の境界線を越える

◆学生時代の過ごし方

-ハーバード大学へ留学した後、コンサルタント会社で働き、Teach For Japanを立ち上げた松田さん。大学時代はどんな過ごし方をしていたのだろうか。

伊藤 「次は松田さんご自身についてお聞きしたいと思います。学生時代に力を入れていたこととして、どういったことが挙げられるでしょうか」

松田 「まず勉強。私は192単位とって卒業しています。130単位くらいで卒業できますが、プラス60単位くらいで卒業しました。なんでこんなにやったかというと、自分で自分の学費払っていたというのが一つ。自己投資をしているから授業をサボるなんていう発想は到底生まれなかった。もったいなくて仕方なく、ケチ主義というか、学べるだけ学んでやろうと思っていました。二点目に関しては中高でやらなかった分の勉強を取り戻す必要性を感じていたから。いい先生になるには、思慮深さであり見識の深さが大切です。中高時代でのマイナス部分を取り戻すことの必要性を感じていたんです。とにかくいろんな分野の勉強をしました。そのおかげで、幅広い知見を身に付け、大局的な考え方できるようになりました」

伊藤 「勉強以外に頑張ったことは何でしょうか」

松田 「学習教室をつくって、自分の指導力を上げるための実践の場としていました。そして普段気を付けていたこととしては、先にも述べましたが、周りと群れないようにすること。そういった意味では友達は少なかったかもしれません(笑)」

伊藤 「大学での生活を通して様々なことを学んだと思うのですが、これが学べてよかったと思うのはどういった点ですか」

松田 「与えられるものを待つのではなく、自分から学び取り、変えていくんだという意志を持つようになったのはすごく良かった。文句ばっかり言うのはだめな学生で、潤沢にあるリソースを大学が提供してくれると思うのは間違いです。自分から学び取る意志が重要ですね」

◆ぶれない軸を作る 

【インタビュー】TFJ3

伊藤 「松田さんは教師時代に、生徒を陸上の全国大会に導いたと思うのですが、指導で工夫していた点はどういったことでしょうか」

松田 「常に意識していたのは、いかにして生徒たちのエンジンに火をつけられるかですね。エンジンに火をつけるために、まずは目標を設定し、可視化していく取り組みを行いました。可視化する取り組みとして、生徒たちには日誌を書いてもらいました。日誌には、長期的な目標に紐づいた中期的・短期的な目標を記してもらいました。目標を記載するのみならず、それに対して今日は何ができたのか・何ができなかったのか、翌日の改善点なども書いてもらいました」

「毎日この取り組みを通して、生徒たちが何を目指すために過酷な練習をしているのかを認識してもらうとともに、自分の練習メニューの記録やタイムの変化を記録することにより、達成感や自己効力感を高まっていきました。ただ、ここではやらせるのではなく、生徒の主体性を重視していました。主体的にやらないと意味がないですからね」

伊藤 「短期・中期目標を立てるのは確かに重要ですよね」

松田 「目標やその目標に向かっての取り組みを可視化することが非常に大切ですね。意識しないと、三日坊主になる可能性が高くなります。考えて終わりではなく、意識して、自分の掲げた目標を可視化する努力が大切です」

伊藤 「松田さん自身はどのように実施されていたのでしょうか」

松田 「目標を紙に書き、壁に貼るということをやっていましたね。その他には例えば、筋力トレーニングのためにジムに通っていたのですが、雨の日などにサボってしまうので、ベンチプレスを家に置いて、それを見ることで『やんなきゃ』という気持ちを呼び起こしていました(笑)」

伊藤 「では、Teach For Japanについてお聞きしたいと思います。松田さんは苦労をたくさんしてきたと思うのですが、それでも頑張ってこられたのはどうしてでしょうか」

松田 「教育に対する想いが強いからです。他人事じゃなくて自分には実現する責任があると思っています。つまり当事者意識を持っているからだと思います」

伊藤 「教育課題をどうしても解決するという『ぶれない軸』を持っていると思うのですが、ぶれない軸を作るのに大切なことは何だと思いますか」

松田 「軸とは、常に何かに立ち返るものだと思っています。自分の軸は間違いなく教育。教育を通して自分自身成長してきましたし、自分が中学生の時に教育に救われたという原体験がこの軸の源になっていると思っています。学生の中には、『軸がない』と悩んでいる人がいますけど、それは必ずしも学生の責任でもないかもしれません。日本の教育は軸を作る教育をしてない。戦後、長い間は正解主義の教育でしたから、この正解主義の教育によって価値観や軸が「矯正」されてしまっているのです」

「軸を形成していくためには、弱いところを直すのではなく、強みを徹底的に伸ばす教育が必要です。自分の強みを伸ばしていく教育をすれば、学生は就職活動でも困らなくなるでしょう。自分の強みを認識し、どこの分野で活かせるか考えていれば、何をしようか分からないという人は減ると思うのです。ただ、今は軸がないからといって、無理やりフェイクなものを作ってもだめです。そういうときは時間をかけて作ればよいと思います」

伊藤 「軸がない人はどういった努力をすべきでしょうか」

松田 「『試し食い』でしょうね。頭でずっと考えるのでなく、期間を決めてやってみる。やってみることで、自分の価値観について考えるきっかけになる。やってみるからこそ『やりがい』や、『これは違うな』ということがわかる。試し食いを続けることで、いつの日か、自己の軸が形成され、そしてその軸に合う環境と出会うことができるのです。その時に、本食いにかえればいい。社会人になるとリスキーだけど、学生は時間があるから、自分の興味関心を超えてやってみるといいと思います」

伊藤 「試し食い以外ではどういったことで軸は形成されるのでしょうか」

松田 「未来を目指すだけでなく過去振り返ることで進むべき道が見えてくることもあります。過去に『すごく怒った、すごく喜んだ』といった経験を思い出すことで、どういう価値観をもとに生きてきたかが見えてくる。その過去から続いている延長線上が、進むべき道であることがある。スティーブ=ジョブズがCollecting the dotsという表現をしたことは有名ですが、育った環境や過去を振り返ることで見えてくるものがあります。過去を見つめ直し、どんなdotがあるのかを考え、それを線で結んでみるだけでもすごく面白いと思いますね。未来志向だけじゃなく、過去を見つめることも大切です」

伊藤 「最後に一言お願いします」

松田 「自分は、人生の軸である教育分野で、とんがっていこうと思っています。教育に対する知識、政策に対する知識も深めていきたいと思うし、日本の教育の未来を作っていけるような人になりたいと思っています。皆さんも是非とも一緒に頑張っていきましょう」

ポイント

  1. 目標を立て可視化する
  2. 試し食いをして、ぶれない軸を探す

(記事作成:伊藤 有理奈   記事編集: 和田有紀子

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