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「本当のガーナチョコレートを作るプロジェクト」代表、宮坂和憲さんインタビュー(前編)

大学生は学生時代に何を得るべきか?知識か、経験か

記事作成: 武隈 暁子   記事編集: 和田有紀子 | Innovation |2014.04.13

慶應義塾大学在籍中にガーナへインターンをし、そこでの経験や学びをもとに就職する前に本当のチョコレートを作るプロジェクトを立ち上げ、成功させた宮坂さん。

知らない世界に飛び込むだけでなく、周りを巻き込みながらカカオの生産からチョコレートへの加工、販売まで行った宮坂さんに一歩を踏み出し、成功体験を得ることの重要さを聞く。

本当のガーナチョコレートを作るプロジェクト代表

宮坂 和憲(みやさか かずのり)

2009年慶応義塾大学総合政策学部に入学。2012年に休学をし、半年間ガーナに行き、研修を行う。帰国したのちガーナのカカオを使ってチョコレートを作るワークショップを開催する。2013年夏に大学を卒業、その後再びガーナに戻り、カカオの生産から立ち会う。2014年のバレンタインには現地の農家と協力して生産したカオをチョコレートにして大手百貨店等で販売。今年の春から独立行政法人国際協力機構(JICA)就職することが決まっている。

学生インタビュアー

武隈 暁子(たけくま しょうこ)

鹿児島出身、鹿児島育ち。津田塾大学学芸学部国際関係学科の2年生。開発途上の国々から生まれる問題を中心に勉強中。gi人材プロジェクトインタビュアー。

“今と将来をつなげる最初の一歩”

武隈「ガーナの農家でのカカオ生産から日本でのチョコレート販売まで行った宮坂さんですが、最初にガーナに行ったきっかけは何だったのですか」

宮坂「もともと海外インターンシップを運営する学生団体に所属していました。海外から日本の企業にインターンをしに来るたくさんの研修生と関わる中で、たくさんの研修生に自分もインターンに行くことを薦められました。大学でも開発や貧困などのことについて勉強していて、実際東南アジアのスラムとかにも行ったけど、自分がこれから開発や貧困を職業のテーマにしていくのか決心がつかなかったので、それを確かめるためにも4年生の前期を休学して半年間ガーナに行きました」

武隈「ガーナに対して持っていたイメージは実際にガーナに行ってみて変わりましたか」

宮坂「僕が滞在していた村では、電気がない、水やガスがないといったことはテレビで見ている通りでした。そういったところはイメージ通りだったのでそこまで驚かず、拒否反応も示しませんでした。しかし、実際に生活してみると細かいところがすごく気になるんです。例えば宗教とか。村に着いた次の日の朝、インターンシップをする学校に挨拶行ったら校長先生に宗教について説教を2時間くらいされました。何がなんだかわからない状況でキリスト教や死についての話は精神的につらいものがありましたね」

武隈「ガーナについてのイメージは大きくは変わらなくとも、テレビや本からではわからないことが生活していく中で多くあったのですね」

【インタビュー】宮坂さん2

“自分に出来ることは何なのか模索する日々”

武隈「実際ガーナではどのような研修をされていたのですか」

宮坂「ガーナでは私立の小中一貫校の先生をしていました。最初は仕事がなく、先生たちと相談して、数学の先生をしていました。僕が行っていた学校では、繰り上がりや繰り下がりの計算が出来ないような、授業に置いていかれている子供を主に教えていました。しかし、僕が授業をすると普段授業をしている先生が学校をさぼったり、授業中に学校の近くでご飯を食べたりするといった問題が生じ始めたんです」

武隈「外部から来た人にとって、元々あった環境とどうバランスをとるかって難しいですよね。現地の先生とは結局どのように折り合いをつけたのですか」

宮坂「僕は授業の中では宿題を出すだけにして、普通の授業は今まで通り現地の先生にやってもらうことにしました。実はそのとき、村に図書館を作るプログラムを自分で立ち上げて、同時に図書館の内装工事を行っていたので、宿題を出してその宿題を図書館でしてもらうように生徒を誘導していきました。でも、日本の生徒と同じでなかなかみんな勉強しに来なかったんです。だから生徒を集めるために図書館でイベントをするようになりました。日本の文化紹介をしたり、村の出身者で成功しているお医者さんなどを呼んで講演会をしたりしていました。その図書館でのイベントの最後としてやったのがチョコレート作りのワークショップだったんです」

【インタビュー】宮坂さん3

“模索している中で見つけた本当にやりたいこと”

武隈「なぜそこでチョコレート作りをしようと思ったのですか。」

宮坂「村で自分が教えていた子ども達70%がカカオ農家の子ども達だったんです。テレビでよくアフリカの子ども達はチョコレートを知らないといとか、カカオ農家の子ども達は労働力として働かされ学校にも行けていないといった報道がされていますよね。でも、僕が行った村では少なくともそういったことはありませんでした。チョコレートのお菓子は村のメインストリートでおばさんが売っていたし、子ども達もそれを買っていました」

武隈「ということはガーナの子ども達は自分の家で収穫したカカオの味を知っていたということですよね」

宮坂「それがそうではないんです。ここで問題だったのはそのチョコレート菓子の裏を見るとほとんどがメイド・イン・チャイナなどの海外で加工製造された商品だったんです。おそらく、ガーナのチョコレートはアフリカの中でも品質が高いものとして有名で、国際市場の中では高く取引されています。それに比べアフリカの他の国や東南アジアの国々のカカオは安く取引されているためそういった比較的安価なカカオ豆がどこか違う国へ行き、加工されてガーナにお菓子として入ってきているのだと思います。チョコレートがどういう味か子ども達は知っているけど、自分たちが育てているカカオがどのようにしてチョコレートになるのかは知らなかったんです。そこで彼ら自身が作っているカカオでチョコレートを作ってあげたいと思ったのがチョコレート作りのワークショップをしようと思ったきっかけです。そしてこれが今に続くチョコレート作りのワークショップの原点となりました」

武隈「チョコレート作りを通して子ども達に何を伝えたかったですか」

宮坂「君たちが作っているカカオは世界的に見ても素晴らしいものであるということ、本当に世界中で愛されて食べられているものであるということを伝えたかったです」

【インタビュー】宮坂さん4

“思いを形に、周りを巻き込む”

武隈「ガーナでのチョコレート作りのワークショップをした経験をもとに日本でもワークショップをしようと思ったのはなぜですか」

宮坂「最初は僕がガーナで経験したことを日本の多くの人に知ってほしいと思いました。でもただ伝えるだけでは周りの人も興味を持ってくれないだろうと思い、みんなにも馴染みの深いチョコレートでワークショップも開催し、合わせて自分の思いも伝えることにしました」

武隈「ワークショップをしていく中で感じたことはありますか」

宮坂「当初、僕たちがつくるチョコレートはあんまり美味しくありませんでした。そこでクーベルチュールを仕入れてきてお菓子を作るパティシエとは違い、自分で豆から仕入れてきて焙煎をしてチョコレートを作る「Bean to Bar」と呼ばれるチョコレートの職人さんのところに行き、チョコレートについて様々なことを聞きました。日本にあまりいないこのような人に会って、学んでいくうちにチョコレートの奥深さに気付きました。それぞれ国の異なるカカオ豆から同じレシピで作ったチョコレートの味が全く違ったんです。また同時に、アフリカの豆はベースビーンズとして大量生産向けに輸出されるものばかりで、カカオ豆にこだわるBean to Barの職人さん達でガーナの豆に目を向けている事例が殆ど皆無に等しいことに気がついたのです」

「こういった経験から僕はガーナのカカオのよさをもっと引き出したチョコレートを作りたいと思うようになりました。ガーナのカカオ豆だって、しっかり手を加えてあげればきっとカカオ豆の風味が活かされた美味しいチョコレートに出来るはずだと。だから、自分が社会人になる前に、ガーナのあの村で完全現地生産の、ガーナのカカオの風味が最大限活かされたチョコレートを作ろうと思ったんです。それと同時にワークショップも自分の体験談をするのではなくチョコレートの奥深さを伝えるというところに重きを置くようになりました」

(記事作成:武隈 暁子   記事編集: 和田有紀子

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