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「本当のガーナチョコレートを作るプロジェクト」代表、宮坂和憲さんインタビュー(後編)

大学生は学生時代に何を得るべきか?知識か、経験か

記事作成: 武隈 暁子   記事編集: 和田有紀子 | Innovation |2014.04.15

慶應義塾大学在籍中にガーナへインターンをし、そこでの経験や学びをもとに就職する前に本当のチョコレートを作るプロジェクトを立ち上げ、成功させた宮坂さん。

知らない世界に飛び込むだけでなく、周りを巻き込みながらカカオの生産からチョコレートへの加工、販売まで行った宮坂さんに一歩を踏み出し、成功体験を得ることの重要さを聞く。

本当のガーナチョコレートを作るプロジェクト代表

宮坂 和憲(みやさか かずのり)

2009年慶応義塾大学総合政策学部に入学。2012年に休学をし、半年間ガーナに行き、研修を行う。帰国したのちガーナのカカオを使ってチョコレートを作るワークショップを開催する。2013年夏に大学を卒業、その後再びガーナに戻り、カカオの生産から立ち会う。2014年のバレンタインには現地の農家と協力して生産したカオをチョコレートにして大手百貨店等で販売。今年の春から独立行政法人国際協力機構(JICA)就職することが決まっている。

学生インタビュアー

武隈 暁子(たけくま しょうこ)

鹿児島出身、鹿児島育ち。津田塾大学学芸学部国際関係学科の2年生。開発途上の国々から生まれる問題を中心に勉強中。gi人材プロジェクトインタビュアー。

◆0から10をつくる “本当のガーナチョコレートを作るプロジェクト”

武隈「今までのようなワークショップにとどまらず、カカオの生産から販売までを行うようになった経緯を教えて下さい」

宮坂「一旦帰国して就活をしたのち、今度はあの村の人達のカカオ豆を使ったチョコレートを現地で生産するためにガーナに半年間滞在しました。以前インターンしていた村に戻り、当時教えていた生徒の一人であるジョンという男の子の親のカカオ農園でカカオを生産することにしました。ジョンは村でも断トツで成績がよく、高校入試もトップの成績を出していました。それにも関わらず彼は高校にはいけないというのです」

「彼の実家のカカオ農家ではたくさんの子供がおり、一人を高校まで行かせる余裕がなかったことが原因です。そこで、彼のことをよく知っている僕は彼を応援したいと強く思いました。僕が彼の家でカカオ豆を生産することでその収益を高校進学に充ててもらおうと思いました。この一人の生徒の家族と協力してカカオ豆を生産することになったのです」

【インタビュー】宮坂さん5

武隈「カカオ豆の生産を行うに当たって、大変だったことはありますか」

宮坂「カカオ農家はカカオを生産すると品質の良し悪しに関わらず、政府が一括で買い取るという仕組みがガーナにはあります。そのため僕が滞在していた村のカカオ農家の人は品質にはあまり気にしないで生産する傾向にあるのです。でも、私がチョコレート作りのために使いたいカカオはそういったものではありませんでした。そこで片道1時間半歩く農園に何度も足を運び、一緒にカカオ生産を進めました」

「カカオは発酵によって味が大きく異なります。そこで一般的にはバナナの葉っぱでくるみ、発酵させています。しかし政府が一括で買い上げるため発酵させていなくても気づかれず、同じ値段で取引されていたため、ジョンのお父さんはこの発酵の行程をしていませんでした。往復三時間の道のりの後にバナナの葉で包んで発酵させる気力なんて残ってないんですよね」

武隈「なるほど。発酵させても買い取り価格が変わらないならわざわざ大変なことしないと。でも宮坂さんが作りたかったカカオはそのようなものではなかったんですよね」

宮坂「そうなんです。だから僕が作りたいカカオをジョンのお父さんに伝えて、取引されている値段よりも高く払い、同時にジョンの高校進学と3年間の通学に必要なお金を全額、プロジェクトから支援することを約束するから良いものを作ろうということを提案しました。ジョンのお父さんも喜んで納得してくれ、生産から収穫、発酵まで一緒になってやりました。作ったカカオを首都の工場に持っていき、私自身の手で二か月かけてチョコレートにしました。そのチョコレートを日本に持ってきてバレンタインで販売しました」

武隈「日本でも大きなデパートでチョコレートを販売されたり、ワークショップを改めて行ったりしたのですよね。そのとき大事にしていたことはありますか」

宮坂「当初のワークショップでは、ガーナでの自分の経験を多くの人に知ってほしいという思いがありました。でも、二回目にガーナ行って以降のプロジェクトでは、あまりソーシャル的な面や学生だという面を打ち出したくないという思いがありました。デパートで販売するチョコレートはパッケージからこだわって、商品として良いものを販売したいとい思いがありました」

【インタビュー】宮坂さん6

武隈「このプロジェクトをするにあたっての思いは叶えられましたか」

宮坂「ガーナのカカオの良さを活かしたチョコレートを作ることが出来ました。日本人はチョコレートに親しんでいるけど、どうやって作られているのか知っている人なんてほとんどいないですよね。そんな中で、このプロジェクトで作られたチョコレートを食べた人にはカカオの味がどんなものなのかをきっとわかってもらえた。チョコレートの原産国の欄にはベルギーやフランスって書かれていることが多いじゃないですか。それはそれらの国がカカオを輸入して加工しているから。でも私たちのチョコレートは原産国ガーナと書かれています。それは生産から加工まですべてをガーナでしたからできたことなのです。日本で売っている唯一のメイド・イン・ガーナのチョコレートといってもいいと思います」

 

【インタビュー】宮坂さん7

“小さな成功体験を次につなげる”

武隈「このようなプロジェクトを学生時代にやった意味はありましたか」

宮坂「もちろん、今回の活動を進めるにあたって本当にたくさんの方々に支援・指導して頂きましたが、本当のガーナチョコレートを作るプロジェクトを0から10まで自分でトライしてみたことは大きかったです。農園でのカカオ生産から加工、販売まで小さい規模だったけど全部自分でやれたことによって多くの問題点を見つけ、本質を見ることが出来ました」

武隈「学生時代に成し遂げたこの成功体験はこれから就職するにあたってどう活かされそうですか」

宮坂「将来も開発に携わるという道を選びましたが、開発と言ってもなかなか現地に入って自分の目で問題を感じる人は多くありません。現地に行き、現地の人と一緒に過ごしたからこそ、支援というよりは彼らの応援をしたいと思うようになりました。今回はジョンという一人の男の子の夢を応援しましたが、このように現地の人の生活や生き方をみて応援していきたいと思います。そしていずれはまたこの村帰り、今回したかったけどできなかったことの続きをしたいと思います」

武隈「0から10まで小さい規模でもいいからやるということが非常に大事だということはとても理解できました。しかし、学生の中にはやりたいことがあってもなかなか一歩を踏み出せない人がいると思います。そういった人たちは一歩を踏み出すために何が重要だと思いますか」

宮坂「学生ほどすばらしい肩書はないと思います。だからこの特権を活かして一歩を踏み出すのはすごく意義のあることだということをわかってほしいです。そして応援してくれる人は必ずいるので、そういう人を見つけて一緒にやることが重要だと思います。最後に、自分で何かをやるということは周りからいろいろなことを言われるかもしれません。でも自分の軸を常に持って行動することが大事です。やった人、現場に行った人にしかわからないことは本当に多いのでぜひ一歩を踏み出してみて下さい」

(記事作成:武隈 暁子   記事編集: 和田有紀子

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