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通訳から大企業取締役・一橋大学名誉教授に上り詰めた石倉洋子さんインタビュー

「グローバルに活躍するために英語より大切なもの」

記事作成: 何 遥   記事編集: 和田有紀子 | Global |2014.05.19

一橋大学名誉教授

石倉 洋子(いしくら ようこ)

一橋大学名誉教授。経営戦略、グローバル競争におけるイノベーション戦略のスペシャリスト。

上智大学卒業後、フリーランスの通訳を経てバージニア大学大学院経営学修士(MBA)日本女性初のハーバード大学大学院 経営学博士(DBA)修了。その後、マッキンゼー社でマネジャー、青山学院大学国際政治経済学部教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授、慶應義塾大学大学院メディア・デザイン研究科教授を歴任。

他にも、1996年エイボン・プロダクツ株式会社取締役、2004年ボーダフォンホールディングス株式会社社外取締役、日本郵政公社理事、第20期日本学術会議副会長、第1期中央教育審議会委員、商船三井社外取締役、日清食品ホールディングス社外取締役、ライフネット生命社外取締役、世界経済フォーラムのGlobal Agenda Council Education & Skillのメンバー。

学生インタビュアー

何 遥(か はるか)

早稲田大学2年生。2014年8月よりUniversity of California, Berkeleyに留学予定。

自身の経験から世界の教育制度や異文化心理学に興味を持っている。

インタビューを通して伺うことのできる貴重なお話を記事にして伝えることで、大学生に少しでも広い可能性を持ってもらいたいと思い、インタビューを始める。

何「ここまではユニークさの見つけ方からイノベーションの起こし方について伺ってきました。洋子さんはグローバル人材のスペシャリストなのでここからはグローバルに焦点を当てて伺っていきます。グローバルとは地域だけではなく、分野を超越することでもあるといいますが、このグローバル時代、グローバル人材として必要な力とはなんでしょうか」

前編はこちら➡元マッキンゼー・現一橋大学名誉教授が説く。「世界と戦わなければならない今の学生に求めるたった1つのこと」

◆必要なのは自分の意見を持つこと 

【インタビュー】石倉5

石倉「一番大切なのは、自分の意見を持つこと、そして自分のポジションを取るということ。グローバル環境では『私はこう』ということが言えなくてはならないのですが、これは日本では難しいということが問題ですね。学校では教えてくれないし、家庭でも教えてくれない。例えば子供に質問しているのに親が答えてしまうことが日本によくありますよね。でもこれは絶対ダメ。子供に聞いている時は子供に答えさせる。こういうことから変えていく必要がありますね。何事に対しても自分はこう思うということを持っていないといけない。そうしないと世界では『いない』ということと同じです」

◆そして「今を超えた時間軸」と「世界基準」で考える力

石倉「昔と違って、今は情報が多いから自分で選択し、裏を取っていく必要があります。今はだれでも発信しているから、自分で意識的に取捨選択、違う観点から見ることが大切です。 この時に一つの情報からの全体像をとらえるために必要なのが一般教養と英語です。歴史や哲学の知識があることで、ものを見るときの観点が全く違ってきます。 歴史が分かっていると、今現在の出来事一点だけではなく、過去の事柄もひっくるめてみると、今後の予測をすることもでき、一つの情報から得るものの質が全く違ってきます」

「歴史にとても詳しいビジネスパーソンに会ったとき、同じ事柄でも見方が全然違った、とても視野の広い見方をしていました。このような知識は本からも学べます。本を読む機会は時間に恵まれている学生のうちにしかできないことだと思うので、ぜひやっていただきたい」

「そして、時間軸に加えてさらに情報の幅を広げるには世界の視野を得るための英語が必要です。英語ができれば知ることがずっと増えるのは想像ができますよね。そして量だけではなく、観点も多様化します。日本のメディアと例えば欧米メディアは全く違った見方をすることが多いです。日本では報じられなかったことが実は世界的には常識であったとか。日本のメディアも日本語の情報しか元にしていないことがあるので、個人で情報を識別•裏付けすることが欠かせません」

「最近の出来事でいうと、ソチオリンピックとロシアのウクライナに対しての姿勢。歴史を知れば世界の力関係が見えてくるし、英語ができればプーチン大統領に対する欧米の見方が日本とかなり違うことも知ることができます」

「異なった視野からの情報を比べてみて、なぜこんなにも解釈が違うのか、と批判的に分析して、はじめて自分の考え方や見方を決めていくことができるのです。」

何「この世界級の視野を得るために必要な英語。勉強法のアドバイスなどありますか」

石倉「英語は基本的にツールだと思っています。だから英語ができなければ終わり、というような日本の風潮には反対です。やらないと大変だと思いがちだけど、やったらこんなに世界が広がるという風に考えるといい」

「ただ、道具だから使わないとダメで、たまに使うだけではうまくならない。ここがみんなわかっていないところだと思います。道具なので使わないと金槌や包丁と同様に錆びてしまいます。スポーツや楽器とも似ていて少し練習をサボると感触を忘れてしまいます。なので、毎日繰り返し使うことが一番の上達法です。継続が大切です。また具体的な方法ですが、よく私が言うのは中学校、高校の教科書を丸暗記するということです。そうすればだいたい分かってきますね」

◆ビジネススクールで身につけた自分のルール

【インタビュー】石倉7

何「私もずっと読ませていただいていますが、洋子さんは毎日、日英両方でブログを書かれていますよね。(インタビュー時のことも英語のブログに書いていただきました!http://www.yokoishikura.com/english/?p=8340)これも継続を意識的に取り組んでおられるのでしょうか」

石倉「そうですね。自分で毎日書くというシステムを決めておく。書いたり書かなかったりするとダメ。最初は月水金書いて、英語は火木、週末は遊びと決めていたのが、毎日書くようになりました。誰かから言われるとやりたくないから、自分で自分のルールをつくってしまえばいいのです。そうすれば自分がやりたくてやってる、ということなので続けられるのです。実は私は規律正しくない人で、自分で決めないとやらないから自分のルールを設定してシステムとして決めてしまいました」

「これは実はビジネススクールスクール時代に身に付けたのものです。ビジネススクールの勉強は遅れてしまうとリカバリーはできません。毎日やらないとダメで、毎日やらない人はほとんど落ちていました。この原体験から自分のシステム作りを覚えました」

◆フリーターからのスタート、そしてまた組織に属さない原点に

【インタビュー】石倉8

何「ビジネススクールのお話が出ましたが、学生時代についてお聞かせください。なぜビジネススクールに?」

石倉「大学は上智大学だったのですが、当時は学内紛争で機動隊が入ってきたりして。ほとんど学校に行っておらず、代わりにアルバイトをずっとしていました。大学3年時にどさくさ紛れに大学の交換留学制度を利用してカンザスに行って、視野がぱっと広がりました。そして帰国したら就職活動に出遅れてしまって。帰ってきてフリーの通訳の仕事をしていました」

何「通訳からなぜビジネススクールに?」

石倉「通訳になって5年ほどしたら、このまま通訳を続けても先が見えないと感じました。これからの展望がない気がしたのと、「つなぐ」という通訳の仕事ではなく、自分はコンテンツや中身に興味を持っていることに気づきました。通訳という仕事を極めることにはあまり関心がないと。その時にたまたまビジネススクールの先生に会って、この話をしたら、そのドイツ人の先生にビジネススクールをすすめられました。その先生にはとてもお世話になり、推薦文やGMATの本をくれたり。こんなこと一生にもうないと思って。だから必死になって勉強をしてアプライしました」

「でも自信がないし、ビジネススクールがどんな所かもわからなかったので 『私がビジネススクールなんて…』と言ったら『とりあえず行ってみていやならば帰ってくればいい』と言われてああそうだと。じゃあ行ってみようという風にしてバージニア大学のビジネススクールに行きました」

「大変で辛かったけれど、すごく楽しかったです。私がやりたいのはこういうことだったか、と思いましたね。MBA終了後は経営学をもっと学びたいと思い、ドクター(博士号)を取ろうと思いました。いろいろな人に相談したら、比較的小さいバージニアよりもハーバードやスタンフォードをすすめられました。スタンフォードは受かりませんでしたが、ハーバードに合格し、(日本女性初の)ハーバード大学大学院で経営学博士を修了しました」

「いつもその時に興味のあるものをとりあえず始めてみる。そうしたら本当に好きなものや、自分に向いているキャリアが拓けると思います」

何「3月31日で、慶応義塾大学大学院メディア・デザイン研究科を定年退職されて、組織には属さず活躍される洋子さん、所属がないことで不安はありますか?」

石倉「 新しい挑戦です。私はずっと『21世紀は、個人でも世界レベルで活動ができる時代』と発言してきているので、これを自分で実験してみようと考えています。でも、私は大丈夫でも周りが困ることがありますね。講演会などに呼ばれたときは紹介に肩書がないと主催者が困った顔をする時があります。肩書がないと信用されないということもあるかもしれません。そういう時は、一橋大学名誉教授という肩書があるのでそれを伝えていますが……これからは個人でも輝ける時代であると考えているので是非証明したいですね」

何「周りがついてこれていないのですね。イノベーションとグローバルを体現している洋子さん、最後に学生へひとことメッセージをお願いします」

石倉「自分の人生、自分が主役です。常に新しいことに目を向けて広い世界へ飛び込んでいってください」

(記事作成:何 遥   記事編集: 和田有紀子

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