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国際的な組織で活躍してきた国際NGO事務局長佐藤活朗さんインタビュー(前編)

「大学生に知ってほしい国際社会の現状と国際支援の在り方」

記事作成: 中野 綾香   記事編集: 和田有紀子 | Global |2014.06.16

皆さんは開発途上国と聞くとどのような印象を思い浮かべるでしょうか。貧困、内戦、飢餓。ポジティブな言葉が第一に思い浮かぶ方はそう多くはないはずです。しかしながらそのようなイメージとは対照的に、途上国の活気に魅了される人も多くいます。今回のインタビュイー、佐藤活朗さんもその一人。国際組織で途上国支援に携わる佐藤さんに、支援について、国際社会で生き抜く力について、そして現代の大学生についてお聞きしました。

公益財団法人プラン・ジャパン事務局長

佐藤 活朗(さとう いくろう)

1954年、横浜市出身。一橋大学社会学部卒業後、海外経済協力基金(OECF)に就職。

ワシントン駐在員として、世界銀行・USAIDなどとの連絡調整を担当。その後イスラマバード首席駐在員、ジャカルタ首席駐在員、開発援助研究所主任研究員、国際協力銀行(JBIC)、日伯紙パルプ資源開発株式会社常務取締役を経て2010年より現職。

学生インタビュアー

中野 綾香(なかの あやか)

1992年、長野県出身。慶應義塾大学法学部政治学科在学。

いつもは見ることの出来ない、人間の新たな一面・魅力を、インタビューを通して引き出したいという信念のもと、トモノカイgi人材projectで活動を始める。

◆開発途上国、その第一印象は貧しさではなく将来への可能性を秘める活気だった     

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中野「佐藤さんは、海外経済協力基金(OECF)などで約30年間ODA業務に携わっていたとお聞きしました。国際的に活躍されていらっしゃる佐藤さんですが、そのようなお仕事を目指したきっかけは何ですか」

佐藤「私は元々開発途上国に興味がありました。学生時代の専攻が社会人類学で、アフリカやアジアの開発途上地域の研究をしていたことが最初のきっかけかもしれません。研究を通じてそのような地域に行ってみようと思うようになり、学生の時に初めてアフリカに行きました。しかし当時はウガンダの山に登るということが第一目的で、アフリカという途上国を見ること自体は二の次だったのです」

「そのような軽い目的でアフリカに行ったのですが、現地についてみるととても驚いたことがありました。そこではもちろん貧困問題も目の当たりにしましたが、私の目前にはダイナミックで生き生きとした社会が広がっていたのです。決してみじめな感じではなく、今後に向けてどのような可能性も多分に残されているような状況。このようなアフリカの活気を見た私は、今まで知ることの出来なかったこのような世界があるのだ、このような場所で仕事をしていければ楽しいのではないか、などと思うようになりました。その後、ODAの機関に応募・採用されて、以後開発途上国人生を送っています」

中野「現在佐藤さんが事務局長を務めていらっしゃるプラン・ジャパンとは、どのような活動をしているのでしょうか」

佐藤「プラン・ジャパンとは、世界にネットワークを持っている国際NGOの一つです。主な活動としては、途上国の子どもたちの持っている可能性を開花させたいという信念のもと、子どもに焦点を当てた活動をしています。現在50カ国の開発途上国で活動しており、特に小・中等教育分野に力を入れています。また、母親に対する育児の知識支援や、子どもたちの病気を予防するための保健衛生、家族の収入を増やすためのマイクロクレジットなどの多様な活動を行なっています」

「そして忘れてはならないものが子どもの権利です。途上国ではその権利が侵害されている場合が多く見受けられます。したがって子どもの権利が確保されるような活動をしていく。子どもが単に助けられる弱い存在としているのではなく、権利や育つ条件を整えるといった間接的な支援をすることによって、子どもたちが自立し健全に育っていく。そのような状況を実現することが私たちの責任だと思っています」

◆“Because I am a girl, I can spend a happy life”

佐藤さん2枚目

中野「一般的に支援・援助というと、国や村など全体へのものが多いと思いますが、なぜ女性に注目する “Because I am a Girl”プロジェクトを始めたのですか」 

佐藤「もちろん、男の子も支援するのですが、女の子に焦点を当てることには2つの理由があります。一つ目に人道問題としての側面。多くの途上国では、男の子と比べた場合、どうしても女の子が不利な状況に置かれていることが多いのです。例えば、同じ家庭内であっても男の子は学校に行っているのに女の子は行けないといったケースや、たとえ学校に行けたとしても、学校で『なぜ女なのに学校にいるのだ』といったようなヘイトスピーチや教師・男子児童からの性的暴力などに悩まされるといったケースがあります」

「このような事実を踏まえて考えてみると、どうしても男の子と女の子の間に格差が存在し、女の子が不当に扱われていることがわかります。これを何とかしなければいけないというのが一つ目の人道問題の側面です」 「二つ目に開発という側面。ここで意味する開発とは、貧困の解消のことを指します。貧困を減らすために世界で様々な取り組みが行なわれているのですが、男女の問題を考えないことには上手くいかないのではないか、ということに気付きました。つまり、女の子の支援に力を入れると、貧困の解消の近道になるという発想です。女の子がきちんと学校へ行き、教育を受ける。そして出産をして子育てをする」

「女性はある一定期間は子どもにとって最も身近にいる存在となるので、子どもへの影響力が大きいと言えます。識字率上昇により粉ミルクや薬のなどの説明書が読めるようになる。そうすると子どもの死亡率も下がる。また、教育を受けると職を手にする機会も増え、結果として女性が自身の力で得る収入が増加する。そして家族の収入も増えていく。このようなサイクルで貧困の解消につながるので、これは女性だけが得をするのではなくて、社会全体がよくなっていくことを意味しています」

中野「“Because I am a Girl”のBecauseは接続語ですが、何か意図をもってつけられた名前なのでしょうか」

佐藤「確かにこのBecause I am a Girlでは文章が終わってないのです。それは、プラン・ジャパンの活動地であるネパールで、関係者がとあるコミュニティーを訪問した際、ある光景を目の当たりにしたわけです。割とみすぼらしい恰好をした女の子がおり、その子の家に行ってみると、兄弟の男の子のほうはそれとは対照的にしっかりとした服装をしていた。そして男の子は学校に行っているが、女の子は学校に行っておらず、十分に食べさせてもらってもいないと。これに驚いたスタッフは、その子のお母さんにどうしてこのような差があるのかと聞いたそうです」

「するとお母さんはネパール語で、“Because she is a girl”と返答しました。『彼女は女の子だもの、学校へ行く必要はない』と。この事実に衝撃を受けて、このようなプロジェクトをやるべきだと考え始めたのです。この例はとてもネガティブな言い回しとして使われている “Because”だけれども、そのネガティブなニュアンスを、このキャンペーンを通じてポジティブな方向に持っていきたい。『女の子だから幸せになるんだ、お母さんになって幸せになるんだ、頑張るんだ』とか、自信を持ったフレーズに変えていきたいという希望をもって活動しています」 

◆教育とは不平等を打破する大きな武器である

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中野「プラン・ジャパンの支援とは金銭的なものがメインではなく、教育を主としているとお聞きしています。佐藤さんが考える、教育の持つ可能性とはどのようなことですか」

佐藤「子どもというのは日本・パキスタン・ウガンダ、そしてその他のどこで生まれても、生まれた時は皆同じなわけです。皆同じ可能性を持って生まれてくる。しかしながら生まれた場所によって、獲得できる機会に差が生まれ、全く違う人生になってしまう。生まれたところによってこれほど違う人生があるということはおかしくないか、そのような問いが生じてくると思うのです」

「ここで、教育という視点が重要になってくる。教育とは、不平等を緩和する非常に大きな武器なんですよね。特に小・中等教育というのは人生の始めですから、その人のその後の人生を決めていくことになる。教育とは人生全体を決めてしまうような決定的な要素だと思います」

「私が赴任していたパキスタンでは女の人の識字率が3割ほどであり、ほとんど読み書きの出来ない状態でした。もちろん新聞も読めないですし、政治などへの参加の機会を完全に奪われるわけです。選挙の際投票権はあっても字が読めないので判断することが出来ない。そして簡単な計算も出来ないので、買い物の時の釣銭計算であったり、簡単な商売をしたりすることでさえもハードルが高い」

「それだけではなくて、人びとにライフスキルや考える力が身に付いていないと民主主義は成立しなくなってしまいます。教育が非常に重要であるにもかかわらず、教育の不十分な状態が当たり前の状況として存在することで、自分でも疑問を抱かなくなってしまいます。教育の機会を十分に提供し、定着させる。教育というものは先進国に住んでいる人たちが思っている以上に重要な要件なのです」

「支援活動をするといっても、支援を受ける方たちがその気にならないと何も変わらない。単に物をあげることは何の効果も持たないのです。支援に依存するのではなく、支援活動終了後も効果が持続していくようにしなければならない。もちろん活動を通じて物を渡したりしないわけではないけれど、より重視しているのは現地の方々の行動や習慣の変化ですね。それは1、2年で出来ることではないので、大体10年くらいはその地域で継続的な支援活動をするようにしています」

「その活動とは、『助ける』というものというよりも、『寄り添う』ものですね。現地スタッフがコミュニティーの中に赴き、最初にどういう学校を建てたいのか意見を聞く。コンセンサスが取れたら、次に先生やPTAの在り方などについて、住民の方々と話し合います。そして地域で学校を支える仕組みを作り、最後に校舎を建てる段階に移ります。そうすると自分たちの学校という意識が出来るんです。そして永続する学校・教育の習慣が生まれる」

◆『現場に寄り添う』という支援の仕方

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中野「では、国際支援をする際に大切だと思うことは何ですか」

佐藤「現地の事情を理解しするということが重要です。そして住民の方々の考えをじっくり聞く。この過程に時間をかけなければならないと思います。これを蔑ろにすると後でズレが生じてきてしまう。また、住民の方々の本音を聞き出すことはなかなか難しいのですが、重要ですよね。なので現地の人を団体の職員としてコミュニティーに派遣し、その国の言葉でコミュニティーの人たちと話をするのです。そうすると、現地の事情がよくわかる。この問題の背景にはこの要素が存在している、したがってこの部分を工夫しよう、というような、きめ細かい調整が出来るようになるのです」

中野「その話を聞く場において、現地の女性は本音を言えるのでしょうか」

佐藤「やはり女性が本音を言いにくい場合も多いため、そういう場合は女性だけのミーティングを持ちます。こちら側も女性のスタッフを派遣する。特にお母さんたちは子どもの健康に関してものすごく関心がありますから、非常に積極的ですよね。そして子どもだけの話を聞くこともあります。子どもクラブというものを作って、子どもの自主活動をするのです。そのような楽しい経験を経ながらライフスキルを身につける」

「またスラム街などで生まれ育った子どもは自分に負い目を感じることが多く、10代でギャングになってしまうリスクが高いのです。子どもクラブに参加して前向きな活動をし、正当な自尊心を持ってもらう。その子の良い部分を認めて褒めてあげる。そのようなことが大切だと思います」

続きでは、国際交渉の難しさに迫ります。

続きはこちら→国際NGO事務局長に問う。「国際交渉で必要な力とは。日本人の国民性はどう生きるのか。」

(記事作成:中野 綾香   記事編集: 和田有紀子

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