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国際NGO、プラン・ジャパン事務局長佐藤活朗さんインタビュ-

「国際交渉で必要な力とは。日本人の国民性はどう活きるのか」

記事作成: 中野 綾香   記事編集: 和田有紀子 | Global |2014.06.17

皆さんは開発途上国と聞くとどのような印象を思い浮かべるでしょうか。貧困、内戦、飢餓。ポジティブな言葉が第一に思い浮かぶ方はそう多くはないはずです。しかしながらそのようなイメージとは対照的に、途上国の活気に魅了される人も多くいます。今回のインタビュイー、佐藤活朗さんもその一人。国際組織で途上国支援に携わる佐藤さんに、支援について、国際社会で生き抜く力について、そして現代の大学生についてお聞きしました。

公益財団法人プラン・ジャパン事務局長

佐藤 活朗(さとう いくろう)

1954年、横浜市出身。一橋大学社会学部卒業後、海外経済協力基金(OECF)に就職。

ワシントン駐在員として、世界銀行・USAIDなどとの連絡調整を担当。その後イスラマバード首席駐在員、ジャカルタ首席駐在員、開発援助研究所主任研究員、国際協力銀行(JBIC)、日伯紙パルプ資源開発株式会社常務取締役を経て2010年より現職。

学生インタビュアー

中野 綾香(なかの あやか)

1992年、長野県出身。慶應義塾大学法学部政治学科在学。

いつもは見ることの出来ない、人間の新たな一面・魅力を、インタビューを通して引き出したいという信念のもと、トモノカイgi人材projectで活動を始める。

◆国際交渉に生かすことのできる、日本人の国民性とは

プランjapan7

中野「国際的に活躍されている佐藤さんが思う、国際社会で活躍していく際に必要な力とはどのようなものでしょうか」 

佐藤「世の中に『国際人』という人種がいるわけではないのですよ。その人一人ひとりの個性につきると思う。もちろん英語だとか、人と接するコミュニケーション力というものは必要だと思いますが、「国際社会で生き抜く力」というものが特別必要な訳ではなく、日本人のままで、日本人であることを生かしていけばいいと思います。私も始めは無理をして外国の方のようになろうとしましたが、20年くらい仕事を続けるうちにそのように思うようになりました」

「実際のところ、世界の人たちは皆それぞれ自分に根付くお国柄を生かして活動していますよ。それでいいのです。日本人の国民性のようなものがありますが、今の若い人もこれをきちんと受け継いでいる。日本人の国民性の代表例といえばバランス感覚ですね。人の発言に対して強烈に反論しないだとか、はっきりものを言わないだとか」

「逆説的ですが、これは国際感覚なのですよ。世界で起こる戦争や殺し合いは、極端な発言から妥協が出来なくなって起こることが多いです。その点において、『まあまあ、言い分あると思うけれどここは仲良く…』という日本人の国民性・バランス感覚は国際交渉そのものなのです」

「また国際会議などにおいて、インド出身の方は日本人が1言うところを10くらい言うのですよ。日本人が “I think~”などと少しだけ発言してそれで黙っているのとは対照的に、インドの方はものすごくしゃべる。それも国民性です。日本人は発する言葉は少ないけれど、それが国際交渉の場面において有利になることもあるのです。しかしそれも程度問題なので、10話さなくてもいいけれど3くらいは話さないと他国の中に埋没してしまいますよね。そのような部分は気を付けなければいけないと思います」

中野「現在、当たり前のように進学出来る日本において勉強へのモチベーションを持てない学生が増えていますが、途上国の現状を見ている佐藤さんの視点にはどのように映りますか」

佐藤「『義務教育』という言葉がありますよね。普段は特段意識しないで使っているけれど、教育とは本来義務ではなくて権利なんですよ。世界の大半の場所では、満たされていない権利。そういったことを踏まえて日本の現状をみてみると複雑ですよね。恵まれている機会に気が付かないということはどのような状況に人間が立っていても起こり得ます」

「その考え方から抜け出すためには、外の世界を少し見てみると見方が変わるのかもしれませんね。自分の身の回りだけを見ていると、狭い世界に陥ってしまいますが、もう一歩外を見てみると色々な生き方や色々な現実があることがわかり、それと自分の状況を比べてみると見方も変わるのかもしれません」

中野「具体的には、『外の世界』とはどのようなことなのでしょうか」

佐藤「一番私の仕事と関連しているところで言うと、開発途上国の現実。自分でも時々思うのですが、日本に帰ってくると、途上国で仕事していたこと自体が幻だったのではないかと感じることがあります。日本に帰国すると全てがきれいで、全てがスムーズに動いている。そして町では貧しい人をほとんど目にしない。つい半日前に出てきたパキスタンが夢の世界だったのではないかと。なぜそのように感じるかというと、私たちは日本の現実に慣れきっているからなのです」

「しかし、途上国の現実は確実に存在する。幸いなことに現在はグローバル化によって、そのような途上国の情報がBBCやCNNなどを通じて入ってきますよね。そういうものを見るということが重要だと思います。日本やその他の先進国だけで世界が回っているのではなく、世界には貧しいが活力に満ちた途上国が数多く存在するのです」

◆これから待ち受ける困難を打開するために何をすべきか

佐藤さん後半2枚目

中野「今の大学生には明確な目的意識が欠如しているように思うのですが、佐藤さんが思う、大学生のうちにしておいた方がいいことと何でしょう」

佐藤「私は今の学生に対して悲観していません。むしろ、今の若い人は凄いなと楽観していますよ。自分の若い時にこのような発想や考え方があったかなどと考えてみて、恥じる場合の方が多いです。しかしながら現在の大学生にとって、明確な目的意識を持つことが難しいのはその通りだと思いますよ」

「ですが、それはいつの時代でもそうなのです。特に現代では情報が溢れかえっていて、情報の洪水の中で生きなければならない。情報が沢山あることで何もしていなくても、世のなかのことに関してわかった気になってしまう。知識や情報を『与えられる』ことに慣れてしまうと、明確な目的意識を持つことが難しくなってしまうのです」

「しかし、目的意識がないからといって悩む必要はないと思います。人生そのものがずっと発展途上ですからね。ただ、大学生として比較的時間に余裕があるとすれば、一つの世界を突き詰めて学んでみることが重要なのかもしれません。一つの世界を深く学ぶと『自分で考える』習慣が徐々についてきます。なぜそのようになっているのかということを検証したり、それを実現するためにはどのようなテクニックが必要なのかといったことを考えたりすることを通じて、自身で考える力を養える。この力は一生役立つものとなると思います」

「それからもう一つ。大学を卒業すると多くの学生が社会人になると思いますが、社会に出ると今まで無かったような色々な壁にぶつかることがあります。私の場合、そのようなつらい時に自分を救ってくれるものは趣味の世界でしたね。仕事以外の世界を持っていることはとてもよかったと思います」

「大学生のうちは比較的趣味の世界を作りやすい期間なので、その世界での友達やその世界での自分を持つようにすると、壁にぶつかったときに気分転換が出来ます。たとえ就職によって趣味に費やす時間が少なくなったとしても、自分にはこのような世界もあるんだ、仕事に没頭している自分とは別に、向こうの世界にも自分は存在しているんだと思えると、かなり救われると思いますね」

◆枠から飛び出し、挑戦する勇気

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中野「では最後に大学生へのメッセージをお願いします」

佐藤「自分に自分で枠をはめないということですね。時々、『私はこうですから』というように自分を決めてしまっている若い人に出会うのだけれど、そのように一度枠を決めてしまうとそれよりも外に出られなくなってしまうのではないでしょうか。『私の庭には入ってこないでください、お互いに尊重しましょう』と。このようにしていると大きくなれないのです。言い方は抽象的ですが、自分の枠だと思っている領域から少し出てみる。未知の領域に対して怖がらない」

「先ほども言ったように人間誰でも発展途上人だし、まだ20歳ほどの大学生はまだまだ人生の入り口地点にいるのですよ。なので自分に枠をはめる必要はないと思います。はみ出すことへの不安もあると思うのですが、やってみると意外となんとかなる。自分の視野が広がっていくという感覚を、私も経験したことがあります。背中を押してもらってやってみたら意外と出来た。色々なことに積極的にチャレンジしてみたらいいと思います」

(記事作成:中野 綾香   記事編集: 和田有紀子

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