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元官僚田中秀明さんが語る、自分のキャリアパスを築く方法とは。

変わり続ける時代に大学生が身につけるべきは「勉強していく力」。

記事作成: 中野 綾香   記事編集: 和田有紀子 | Future |2014.07.20

真面目、お固い、激務。そのようなイメージが根強い官僚という仕事。しかしながら、実際の現場を覗いた経験のある学生は少数でしょう。ヴェールに覆われた霞ヶ関とはどのようなところなのでしょうか。財務省元官僚の田中さんにお聞きしました。

明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授

田中秀明(たなか ひであき)

1960年、東京都出身。1985年、東京工業大学院終了(工学修士)後、大蔵省(現財務省)入省。内閣府、外務省、オーストラリア国立大学、一橋大学などを経て、2012年4月から現職。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士、政策研究大学院大学博士。専門は予算・会計制度、公共政策・社会保障政策。著書に、『財政規律と予算制度改革』(2011年、日本評論社)、『日本の財政』(2013年、中公新書)。

学生インタビュアー

中野綾香(なかの あやか)

1992年、長野県出身。慶應義塾大学法学部政治学科在学。普段は見ることの出来ない、人間の新たな一面・魅力を、インタビューを通して引き出したいという信念のもと、トモノカイgi人材projectで活動を始める。

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〜第三章 「官僚」から「学生」へ〜

もう一度新しい世界に飛び出そう

中野「田中さんは財務省入省後に留学をされていますが、学生時代ではなく、一度社会に出てからの留学というのはどのような感じなのでしょうか」

田中「私は役所に入ってから5年目でイギリスにあるLondon School of Economicsの修士課程に留学しました。その時の専攻はSocial Policy & Planningというもので、留学する直前の2年間に出向していた厚生省で老人福祉・医療を担当しており、社会保障に興味を持ったことが専攻を決めるきっかけとなりました。」

「今の学生さんは学部生のうちに短期留学をするという形を取ると思います。私は修士号取得のために留学していたので、英語の会話力よりも英語の論文を読む力、理解する力、そして速読力が重要でしたね。修士号取得の際の最終テストは3科目のテストと論文でした。そして日本の大学と一番違うことは本や論文をものすごくたくさん読まなければいけないことです。リーディングリストには山のように論文があり、毎週それを読むことになります。特に日本人の場合は論文を事前に読んでいかないと授業についていけなくなってしまいます。この点が留学で一番大変だったことですね」

中野「政府のプログラムの充実によって、最近は留学する大学生が増加しているように思いますが、留学する際に重要なこととは何でしょうか」

田中「留学をする目的によって人それぞれだと思いますが、やはり問題意識を持って留学すべきですね。例えば、教育問題やコーポレート・ガバナンスなど、なんでもよいのですが、世界と日本を比べてみるのはどうでしょうか。大学生に対して、急に問題意識を持ちなさいというのは難しいけれども、何かしらの考えを持って留学に挑むことで、勉学面でも生活面でもより充実した生活が送れるようになると思います。また、一度社会に出て働いてからもう一度勉強しようということも可能なので、焦ることなく自分にとってベストだと思える時期に行くのもいいかもしれませんね」

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〜第四章 留学後、それからの途〜

官僚時代の仕事がきっかけとなった研究者としての人生

中野「官僚から研究者に転職されてから、財政や公共政策などの研究をされている田中さんですが、そのような分野に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか」

田中「1998年に私は大臣官房文書課という部署に移動になり、そこで中央省庁等改革を担当しました。この改革によって大蔵省から省名が財務省に変わりました。改革の1つに政策評価があり、私は財務省における政策評価をどのように行なうかについて考えることになりました。地方自治体の政策評価であれば、老人介護施設が充実しているとか、保育サービスがよりよいだとか、具体的なサービスが受益者にどのような影響を及ぼしているかという点で評価出来ますけれど、財務省における政策評価では具体的な評価をどのようにするのか。国内の有識者にいろいろ聞いて回ったのですが、よくわかりませんでした。そこで、海外の事例を調べたわけです。今思えばこれが研究者に転職した最初のきっかけだったと思います。最初は政策評価を調べていましたが、他国のことを調べているうちに世界各国ではどのような財政再建がなされているのか、そしてどのように赤字を削減していけばよいのかということも徐々にわかってきました。実際に各国を訪問し、諸外国の財務省の担当者や学者とも意見交換しましたが、私にとっては発見の連続で、このような作業は大変楽しかったですね」

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〜第五章 大学時代に将来の方向を変えた〜

恩師の姿が将来の夢になった

中野「東工大出身というと、エンジニアなどの理系の職業のイメージが強いのですが、田中さんはなぜ官僚を目指そうと思ったのですか」

田中「大学にいる時に、経済企画庁、今で言う内閣府に勤務経験のある先生の講義を受けていたのです。その先生は『官庁エコノミスト』と呼ばれており、その授業を受け、経済のことを学んでいくうちに経済部門に興味を持つようになりました。そして、その先生の影響を受けて『では国家公務員試験を受けてみるか』と思い始めるようになりました」

中野「官僚を目指すとなると、かなりの試験勉強が必要だと思うのですが、田中さんは大学時代、どのような生活を送っていたのですか」

田中「そうですね、当時私は工学部の学生でしたので、沢山の実験をやらなければならず、授業やレポート作成で忙しい日々を送っていました。理工系の学生の多くは大学院の修士課程に進みます。修士の1年生の時に国家公務員の試験勉強をしました。。あまり遊べなかったのですが、私は山が好きだったのでサークルで山登りをして楽しんでいました」

 “one of them”から抜け出す必要性

中野「難関の国家公務員試験に合格することは大変だと思います。その難関突破に向けて努力している大学生が今すべきこととは何でしょうか」

田中「もちろん試験勉強は疎かにはできません。私は経済区分で受験しました。経済は数学が必要なので、マクロ・ミクロ経済の問題は結構解きやすかったのに対して、憲法や民法の問題には苦戦していましたね。しかしながら試験というのは必要条件でしかなくて、役所に入ってから何をしたいのかという問題意識がないとなかなか採用にまで至ることができないと思います。官庁訪問では、自分をアピールしないとone of themと一緒になってしまいます。勉強のみに捕われるのではなく、広い視野を持つ必要がありますね」

田中「このようなことは官僚を目指す大学生のみに言えることではなく、民間企業への就職を考えている大学生の皆さんにも共通することだと思います。また、現代社会では専門性が必要とされてきているので、将来的には、自分の得意分野を見つけることも必要です。今まで日本社会では、いわゆるジェネラリストを育ててきました。大企業に就職すると様々な部署を回って仕事をするため、広範囲の仕事の概要は把握できるのですが、専門性がそれほど育成されないのです。しかしながら自分をより輝かせ、自分の能力を存分に発揮するためにはやはり専門性を持っていた方がよいと思います。現在の日本の雇用は二極化しており、高度な専門性を持った仕事、例えばファンドマネージャーや弁護士、医者のような仕事、もう一方は単純労働の仕事にわかれてしまっています。それは、IT化によって中間の職業がなくなっているのです。大学を卒業した後も、自分で勉強して、専門性を磨いていくことが必要だと思います」

中野「ありがとうございます。最後に大学生へのメッセージをよろしくお願いします」

田中「『大学生は勉強しない』という言葉をよく耳にしますが、私自身は今の学生さん達のほうが昔の学生よりも勉強している感じを受けます。勉強も遊びも一生懸命。私はとてもよいことだと思いますね。そして大学時代には色々なことを見て、色々なことを経験することがいいと思います。そして、大学生の皆さんは現在法律や経済、その他一般教養などの様々な勉強をしていると思いますが、そこで得た知識というものは不変ではなく、常に時代遅れになるのです。したがって、常に勉強していかなければならない。新鮮な知識を吸収し、自分の将来に対して投資していくためには、会社に入っても役所に入っても常に継続的な勉強をする必要があるのです。大学生のうちからそのように色々なものに目を向け『勉強していく力』を身につける努力をしていくとよいかもしれません」

(記事作成:中野 綾香   記事編集: 和田有紀子

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