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公務員志望者必見!「霞ヶ関ってどんなところ?」財務省元官僚田中秀明さんインタビュー

なかなか知ることの出来ない官僚の世界とは

記事作成: 中野 綾香   記事編集: 和田有紀子 | Future |2014.07.20

真面目、お固い、激務。そのようなイメージが根強い官僚という仕事。しかしながら、実際の現場を覗いた経験のある学生は少数でしょう。ヴェールに覆われた霞ヶ関とはどのようなところなのでしょうか。財務省元官僚の田中さんにお聞きしました。

明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授

田中秀明(たなか ひであき)

1960年、東京都出身。1985年、東京工業大学院終了(工学修士)後、大蔵省(現財務省)入省。内閣府、外務省、オーストラリア国立大学、一橋大学などを経て、2012年4月から現職。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士、政策研究大学院大学博士。専門は予算・会計制度、公共政策・社会保障政策。著書に、『財政規律と予算制度改革』(2011年、日本評論社)、『日本の財政』(2013年、中公新書)。

学生インタビュアー

中野綾香(なかの あやか)

1992年、長野県出身。慶應義塾大学法学部政治学科在学。普段は見ることの出来ない、人間の新たな一面・魅力を、インタビューを通して引き出したいという信念のもと、トモノカイgi人材projectで活動を始める。

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〜第一章 日本の財政に関する基礎的な認識を得よう〜

身近にある問題に興味を持つということ 

中野「現在、日本の財政赤字は1000兆円を突破している状況ですが、この状況はなぜ生じてしまったのでしょうか」

田中「財政赤字の原因を一概に特定することは出来ませんが、政治家・官僚、そして国民に責任があると思います。一つには、景気が悪いからといって政府が国債を乱発したり急増する社会保障に対して十分な対策を取ってこなかったりしたことが挙げられます。このように考えると、政治家や官僚によって借金が膨らんだとも考えられるのですが、実際政府を選んだのは国民なのです。財政を通じて国民が利益を受けていることも確かなのですよ。国民は税金などの負担が少ないにもかかわらず、公共サービスや社会福祉などの様々な便益を享受しているのです。税金は出来るだけ支払いたくないけれども国から多くのサービスを受けたいという『低負担高福祉』を政府に求め、選挙で投票しているのは国民に他ならないのです。」

中野「日本はこの状況から脱却することはできるのでしょうか」

田中「なかなか難しいと思います。国でも企業でも窮地に立たないと変わることは出来ません。企業の例を見てみると、つい最近2009年にJALが倒産しましたね。JALは倒産してから国や裁判所の指導を受け入れ、初めて本気になって経営改善に取り組んだと思いますが、これは国にも当てはまります。国が多額の借金をした場合、特に経済規模が小さな国であればすぐに金利が上がってしまいます。国がお金を市場から吸い上げることにより、民間企業が市場で借りれるお金が少なくなってしまうため、結果的に金利が高くなってしまう。例えば経済危機に陥ったギリシャ。ギリシャは一時10年債の長期金利が30%になっていました。ギリシャのように小さな国でそのような金利上昇が起こると、国民は生活に困窮するため政府を非難するようになります。そうすると政府も財政赤字の削減に取り組まざるを得なくなるわけです。しかしながら1000兆円もの借金のある日本の10年債の長期金利は0.6%程度であり、金利はギリシャほど高騰しないためそれほどの痛みが伴わないのです。学生が試験前にならないと本気で勉強に取り組むようにならないのと同じように、痛みを伴う状況にならない限り改革を本気で推進するのは難しいと思います」

「今は先進国の優等生としてのイメージの強いスウェーデンですが、1990年代前半には財政赤字により経済は危機的な状況に陥っていました。当時、スウェーデンは3年連続マイナス成長となり、短期金利は当時500%。歳出も削減しなくてはならず、世界の中でも社会保障が充実していると言われているスウェーデンでさえも子ども手当を削減しました。その結果出生率は下がってしまいましたが、そうせざるを得なかったほど厳しい歳出削減を行いました。この例にもみられるように、緊急性が出てくることで改革は進むのです」
アベノミクスの効果とはいかほどに?

中野「現在の日本の経済部門では『アベノミクス』による改革が進められています。この点では財政再建の道が開けてきているということでしょうか」

田中「アベノミクス、特に異次元金融緩和によって経済は上向いていますが、財政再建の観点からは懐疑的です。成長戦略によって経済が成長し、向こう10年間で名目成長率が3%、実質成長率が2%という高い成長率を達成すると主張していますが、かなり楽観的な戦略ですよね。これは、バラ色の経済成長によって年金問題も安泰、財政再建問題も可能ということを意味しています。そうであれば、あえて痛みを伴う改革などしなくてよいですよね。政治的なスローガンとして、『高い成長率を目指しましょう』ということは否定しませんが、財政や社会保障の分野では、慎重な成長率を前提とすべきです。将来にはリスクが存在するため、そのリスクを考慮すべきだからです。要は、成長率については、ダブルスタンダードでよいのです。。経済成長は財政再建にとって重要ですが、経済が成長し税収が増えると使ってしまうのが現実の政治です。仮に成長しても、社会保障等の支出をコントロールできなければ、財政再建はできないでしょう」

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〜第二章 中央省庁の中身を知りたい!〜

現在人気急上昇中の省庁とは

中野「一般的な民間の企業と霞ヶ関とでは異なる部分も多いと思います。ヴェールに覆われているが故に魅力的でもある霞ヶ関とはどのようなところなのでしょうか」

田中「まず省庁に入省すると様々な部署を回ることになり、平均一つのポストに1年〜2年という短い期間いることになります。入省してから数年間はとてもハードで、明け方の3時4時に帰宅することも稀ではありませんでした。いつも忙しい部署にいると消耗しますので、ときどき比較的時間に余裕を持って仕事が出来る部署に異動します。地方や海外などですね。そして、霞ヶ関は、基本的には、個人ベースの人事です。20年、30年かけて、優秀な人間を選抜していきますが、個人をどのポストにつけるかということを考えて人事が行われます。」

「逆に欧米ではポストや職務を基準とする人事が行われています。『このポストに就くためにはこういう能力が必要なので、その能力があるあの人にポストに就いてもらいましょう』というような感じですね。加えて欧米諸国では、省庁の幹部ポストの多くは官民の公募になっています。ある役所に入ったからといっても、その役所の中で出世できる訳ではなく、常に競争に晒されているので、官僚たちは自分で能力を磨き業績を上げていかなければなりません。日本の霞ヶ関も見習う部分があります」

中野「民間企業にはない業務分野、例えば外交や防衛などの多くの分野が存在している中央省庁ですが、その中でも人気のある省庁はあるのですか」

田中「昔から外務省や総務省、財務省、経済産業省は人気の高い省庁でした。最近はどうなっているかよく知りませんが、私の周辺では、金融庁を志望する学生が結構います。財務省と金融庁は『お金』の分野に携わっているという意味では似通ったイメージがあると思うのですが、財務省は予算関係に従事しているのに対して、金融庁はその名の通り金融を指揮しています。省庁の外で活動しようと思ったとき、金融制度について詳しいだとか金融検査の経験があるだとかいうと、その専門的な経験を活用することが出来る訳です。金融庁では専門性を磨くことができるので、人気になっているのだと思います」

国を動かす「官僚」として仕事をするということ

中野「国の政策形成に携わるという、規模の大きな仕事をなさっていた田中さんですが、そのキャリアを通じて楽しかったこと、また大変だったことはありますか」

田中「役所では1年〜2年でポストが変わるので、専門性が身に付きにくいというデメリットあると先ほど申し上げましたが、他方で様々な仕事を経験できるというメリットもあります。私自身、厚生省や外務省大使館、内閣官房、大学にも行くことができました。それ以外にも、地方自治体や国際機関、最近では一般企業に派遣されることもあります。様々な経験ができるという点では、楽しかったですね」

「また、厚生省で係長をしたときは、法律改正でとても忙しかったのですが、国民により近いところで仕事ができたのでやりがいがありました。財務省の仕事は予算や国際金融なので、実際の国民生活からは少し離れているわけですが、逆に厚生省はより国民生活に直結する仕事をしています。私自身は老人福祉や医療を担当していましたが、老人福祉などの制度改革は国民の福祉に直結するのです。そうすると自分が担当した仕事によって国民の皆さんがよりよいサービスを受けられるようになる。これにはかなりのやりがいを感じました」

官僚になったあとも人生の途は一つではない

田中「公務員試験に合格し、晴れて入省したとしても『退職するまでずっと霞ヶ関にいる』という途だけではないのです。保守的なイメージの強い省庁ですが、5年ほどしたら海外へ留学する機会もあります。役所に入りたてのころは下積み時代なので、大変忙しく、肉体的にもハードですが、それを乗り越えると徐々に政策に携われるようになります。最近は、官僚として働いても、コンサルや金融などの企業に転職する人も増えています。省庁に入った後も自分次第で様々な途を開くことが出来ますが、自分の能力を磨く必要があります」

「このように将来の途を切り開くためには継続的な自分への投資が必要です。どういうことかというと、10年後の自分はどうなっていたいかということをイメージしながら、それを実現するために今自分は何をしたらいいのかということを考えていくということです。自分の将来に投資をし、自分自身を教育していくとこで、世界に通用する人材になることができるのではないでしょうか」

官僚から留学、そして研究者へ。
インタビュー後編が読みたい方はこちら!

(記事作成:中野 綾香   記事編集: 和田有紀子

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