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ミリオンセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』著者 山田真哉さんインタビュー

思いもよらないものが思いもよらない形で役立つ人生

記事作成: 和田 有紀子   記事編集: 和田有紀子 | Innovation |2014.08.15

累計160万部のミリオンヒットとなった「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」(光文社新書)や、「女子大生会計士の事件簿シリーズ」(角川文庫)をはじめとし、これまでに何冊もの会計や税務に関する書籍を出版してきた山田さん。今回は、本業である会計士・税理士のお仕事と執筆業をいかに両立させているのか、そして会計士・税理士という仕事についてお聞きしました。

公認会計士・税理士・一般財団法人芸能文化会計財団理事長

山田 真哉(やまだ しんや)

大阪大学卒業後、東進ハイスクール、中央青山監査法人/プライスウォーターハウス・クーパースを経て、独立。2011年より現職。小説『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫他)はシリーズ100万部、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)は160万部を突破するベストセラーとなる。多くの企業の会計監査を行い、最高財務責任者、税務顧問、社外取締役を務めた経験から、現在も約40社の顧問として社長の参謀役になっている。

インタビュアー(当サイト編集長)

和田 有紀子(わだ ゆきこ)

1992年生まれ、東京大学経済学部3年。企画・編集業務の傍ら自身も記事やインタビューを執筆。雑誌等への記事提供や大手企業でのコンテンツマーケティングも手掛ける。記事を通して、学生のさまざまな可能性が広がることを目指して活動を続ける。

会計士業は「なんでも相談室」

和田「まずは山田さんの一風変わった経歴からお聞かせいただけますか」

山田「僕は大学在学中は日本史を専攻していて、古文書ばかり読んでいました。ただ、そのまま研究者の道へ進むのは難しいとも思っていて。一方で、大学1年のときから続けていた予備校講師のバイトが楽しいというか、我ながら才能があるんじゃないかと思ったので、そっちの道へ行こうと思い、将来講師になるという前提で、東進ハイスクールに職員採用で入りました。しかし、一流の先生方を間近で見ていると、とても僕にはこの人たちと戦うのは無理だと思ってしまって。若気の至りも手伝って、そのまま東進を辞めました。そのあと第二新卒として就職も考えたのですが、働くのが嫌だったので資格の専門学校にいって、ちょうどよいのがあると勧められたのが会計士の資格だったのです」

和田「今から考えると本当にちょうどよかったのですね」

山田「結果的には僕に向いていたのですけど、後から思ったのですが、ただ単に会計士講座が一番受講料が高かったから勧められただけだという。とりあえず勧められたから会計士の勉強をして、1年後に試験を受けたら受かりました」

和田「一発でですか?(ちなみにここ3年の合格率は6~8%で推移)」

山田「はい」

和田「やはり向いてらっしゃったのですね」

山田「とは言っても、予備校講師として約5年間、生徒がどうやって受かるかをずっと考えて教えてきたわけですから、試験の攻略法には詳しくなっているわけですよね。『試験というのはこういうメンタルでこういった準備をしたら受かる』というのを人に言ってきたわけですから。それを自分で実践してみただけです。そして、中学からずっと苦手だった英語がなかったので気持ち的にもすごく楽で。気力・体力ともに一番充実しているときに受けることができたっていうのが、大きかったと思います」

「会計士補(当時存在していた公認会計士になる前の修行段階)になってからは、大手の監査法人に入って数年間経験を積んで、公認会計士の資格を取って独立をしました」

和田「続いて会計士の本業の方を詳しくお話いただきたいのですが」

山田「業態でいうと想像がつきにくいかもしれませんが、『なんでも相談室』みたいな仕事なんですよ。基本的な会計実務は会社の経理さんたちがこなしてしまうので、僕たちに投げられるのは難しい問題です。投げられた問題の中でもすぐに答えられるものが半分、すぐに返答できない難しいものがもう半分。例えば、判例を調べたり租税条約を見なければいけないとか」

「質問に対し、調べて解答を出して、こうすれば監査でも大丈夫です、こうすれば国税庁とも戦えます、というようなことを答えます。ですから、会計士・税理士の仕事では調査能力が一番大切ですね」

和田「適切な場所で適切なことを調べるといった能力ですか」

山田「どの資料を調べるのがよいのか、どういった検索ワードで検索をすればよいのか、誰に聞くのがよいのか。自分一人だと限界があるので、インドの税金ならあいつが詳しい、パチンコ業界ならあいつが詳しいというように、記憶と人脈を総動員して解答を導き出す。そういった仕事が日常で半分以上を占めます」

和田「専門の棲み分けは徐々にできてくるものなのでしょうか」

山田「10年くらいやっていると段々とできてきます。最初の5年くらいはみんな下っ端でなんでもやらされますが、その中で得意不得意が出てきます」

和田「それは案件でたまたま出くわして相性あるものに進むことが多いのか、それとも大学での専門の延長になるなど、どちらのパターンが多いのでしょうか」

山田「断然、どのような案件を受けてきたかの方が多いでしょうね。学生さんに言うのもなんですが、大学で習ったことは基本役に立ちません。と言うと何のための勉強だ、という話にもなるのですが、実務経験がとにかく大事。言い方を変えると、センスを磨くことが大切。『これはたぶん正解だ』『これは絶対やっちゃいけない』というような感覚、これがセンスです。そのセンスが磨かれるのは経験でしかないと思います。だからセンスは生まれつきのものというのは絶対間違いで、経験の積み重ねが勘になり、センスになる。机上でやっていることは、もちろん回りまわって役に立つんですけど、実務では直接には役に立たない。そういう意味では、バイトとかでも学生のときから経験を積んでいるのは強いですね」

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「あったらいい」から生まれた会計小説

和田「では続いて、書籍を書いていることについてお聞かせください。いつ頃から書こうと思ってらっしゃったのでしょうか」

山田「予備校で現代文を教えているときに、文学史を教えるのが難しくて、どうやったらわかりやすくなるかと考えたときに、文学史の登場人物が出てくる短編を作ろうと思ったのが、今思えばきっかけになっています。それから数年後、会計士の受験勉強をしていたときに、マイナー資格の共通点でもあるのですが、資格を取得した後のことが自分でもよくわかっていないなあと思っていたのです」

和田「というと?」

山田「つまり、資格を取得して働くようになったらどんな仕事をして、どんな日常があって、どんな楽しいことがあって、どんな苦しいことがあるのかといった情報が全く入ってこなかったのです」

「弁護士や警察といった、ある程度メジャーな職業であればなんとなくイメージできるけれど、新人会計士がどういうことをするのかはさっぱりわからなかった。だから、マイナー資格の小説などがあると役立つだろうなと、受験勉強をしながら考えていました。会計士は9割方監査法人という会計事務所に入るのですが、僕もご多分に漏れず監査法人に入りました。その時には小説のこともほとんど忘れていたのですが、会計士補が全員参加しなければいけない団体があって、僕はそこで広報委員長をやらされていたんですね。広報委員長ではイベントでもPR活動でもいいので何かをしなければならなかった。そのときに小説のことを思い出して、会計士受験生に新人会計士の日常がわかる小説を書いたらよいのではないかと思って、資格学校の月刊誌で連載をさせてもらったのが始まりです」

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(『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社新書 右)、『女子大生会計士の事件簿dx.1』(角川文庫 左))

使える時間は自分で作る

和田「本業の会計士・税理士業に加え、執筆活動を行うとなると日々本当に忙しいと思うのですが、時間をどうやってやりくりしているのでしょう」

山田「正直やりくりできていないんですけどね。何時から何時までは会計業、何時から何時までは執筆活動というようなスケジュールは決めていません。決めたところでその時の仕事の分量と締切に依ってしまうので、大切なことはいかに空いた時間を使うか、仕事できる時間を長くできるかということです」

「例えば、僕は自宅からオフィスまで初めのころは電車で通勤していて、10分くらい揺られている間にスマホでニュースを読んでいました。でもニュースって、別に通勤中でなくとも、ほんとに空いた時間で読むことができます。だったらこの時間をなんとか座って執筆するにはどうすればいいかと考えて、バス通勤に変えたんですね。バスだと、30分かかっちゃいますが、30分間バスの中で集中して原稿用紙2~3枚くらいは書くことができる。それが往復、毎日ですからね」

和田「細切れの時間をできるだけ少なくして、ある程度まとまって使える時間にするという工夫の仕方なのですね」

山田「まさにそうですね。空き時間を減らす努力は大切です。まあ、そうはいってもどうしても空きはできちゃうので、僕はこの時間にこのあとの3時間何をしようかという段取りを考えています。最初にこの仕事をして、この仕事をやりながらあの仕事を終わらせて、あの仕事を指示しておけばあーなるなって」

和田「いかにも予備校の先生みたいですね」

山田「そうですね。あとはTVも好きなのですが、すべて録画して倍速で見ています」

和田「内容がキャッチアップできればよいということですか」

山田「ドラマにしてもスポーツにしても全部が全部面白いわけではないじゃないので、面白いところだけ見ればよいかなと思って。本も月10~20冊くらいは読んでますが、それもショートカットして読んでいます」

和田「流し読みということでしょうか」

山田「速読はできないので、まずは出版社のサイトにあるあらすじを読んで、最初の30ページくらいを読む手間を省きます。それから中盤まで読んで、ネタバレなしの感想などを数本読めばだいたいのことが掴めるので、あとは終盤をじっくり読みます」

「ビジネス書だったら、要約サイトを先に読んでポイントを把握し、それをもとに大事なとこだけをじっくりと読みます。インプットに時間がかかりすぎると、アウトプットができなくなるから、インプットの時間をいかに圧縮して、どれだけ量を入れることができるかが大事ですね」

思わぬところで思わぬことが役立つ人生

和田「最後に学生へのメッセージをお願いします」

山田「僕自身大学4年間日本史の研究と現代文の講師に明け暮れていたのですが、それが今の会計士・税理士の仕事に生きているかというと一つも活きてはいません。とはいえ日本史の研究で行う、史料を丹念に読んでそこから論理を組み立てて一本の論文に仕上げるという過程自体は今の仕事に近いところがあります。また、予備校講師をやったことは、お客さんに会計や税務の難しい話を教えるのに役立ってはいるので、直接ではありませんがつながっていると思います」

「人間生きていると、思わぬところで思わぬことが役に立つので、色々な経験をするのがよいのかなと思います。ただ、極めるとは言わないまでも、ある程度マスターしておかないと応用がきかないので、今やっている専門の勉強やバイトなどを一定のレベルまで身に付けるつもりで頑張ってください」

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(記事作成:和田 有紀子   記事編集: 和田有紀子

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