記事であなたの可能性が広がる ~学生のための記事・イベント配信サイト~

【いまさら聞けない!】ISIS(イスラム国)とは?そして今中東のイスラム教徒の間で起こっていることとは

記事作成: 和田 有紀子   記事編集: 和田有紀子 | Global |2014.08.21

ここ数か月、ニュースや新聞などでよく目にする「ISIS(イスラム国)」。シリアで日本人が捕えられたことも、ますます拍車をかけていることでしょう。中東地域で何か大変な紛争が起こっていることはわかる、だけど実のところ具体的に何がどうなっているのかはわからないという方が多いのではないでしょうか。この記事では、ISISについて、そしてこれを語るに避けては通れないイスラム教の宗派について、簡潔にわかりやすくまとめました。

ISISとは?

ISISとは、「イラク・シリア・イスラム国」の略で、イスラム教の中でも多数派であるスンニ派(後に詳述)の武装勢力です。イラク北部およびシリアを中心とする地域で、イスラム国家の樹立を目的として活動しており、ヨルダン生まれの活動家ザルカウィ氏がイスラム教過激組織アルカイダ(後に詳述)の傘下組織として2006年にISISを結成してから2014年現在に至るまで、多数の自爆テロ、誘拐、暗殺などの事件を起こしています。

当初はアルカイダに忠誠を誓っていたISISですが、やがて考え方の違いから対立を始め、徐々に関係が悪化していきました。そして今年2014年に入り、とうとうISISはアルカイダから離反し、離反後数か月でイラク北部やシリアの都市を掌握したほか、スンニ派の兵士たちを解する一方、シーア派の人々2000人余りを処刑しています。

イスラム教とはどのような宗教?

スンニ派とシーア派、それぞれがどのような宗派かを説明する前に、イスラム教がどのような宗教なのかからお話しましょう。イスラム教は、ムハンマドを最高の預言者とし、そのムハンマドを通じて唯一の神Allahが伝えた言葉を信じ従う宗教です。ムハンマドは570年ごろメッカ(イスラム教最大の聖地)で生まれ、40歳前後に神の声を授かってからは各地で布教を行い、時には対立勢力と戦うこともありました。そのムハンマドの言葉を後継者たちがまとめたものが、聖典である「コーラン」です。アラビア語で「朗読されるもの」という意味を持つコーランは、アラビア語以外の言語で朗読することが禁じられており、そこに書かれている『六信五行』はイスラム教徒にとって最も大事な信仰箇条と行動規範になっています。

また、コーランが今のような内容で確立したのはムハンマドよりも後の時代ですが、イスラム教の起源は『出エジプト記』で知られる指導者モーセの時代(紀元前13世紀ごろ)にさかのぼります。諸説ありますが、キリスト教もイスラム教もユダヤ教も起源は同じで、それぞれ旧約聖書にそれぞれの教典(新約聖書、コーラン、タルムード)が合わさり、それぞれ違った教義を取るようになりました。私たち日本人にはなかなか理解しにくいですが、大まかにでも背景を知ることで、少しでも理解できると今ある問題もわかりやすくなるかもしれませんね。

六信五行

イスラム教の宗派、スンニ派とシーア派

それでは、私たちがよく耳にするスンニ派やシーア派という宗派はどういった宗派なのでしょうか。イスラム教にはこの2つ以外にも様々な宗派がありますが、スンニ派とシーア派はそれぞれ、第1・第2の信仰者を有する勢力です。シーア派は、ムハンマドの娘婿であるアリーの血統者のみが正当なイスラム教徒であると主張する宗派で、「シーア」とはアラビア語で「党派」を意味します。もともと「アリー派(Shī‘ah ‘Alī)」と呼称されていたところ、後にShī‘ahだけが残り宗派の名前として定着しました(ですから、日本語でシーア派というのは、意味が被ることになります)。一方のスンニ派は、「慣行」を意味する「スンナ(Sunna)」、そしてそれらに従う人を意味する「スンニー(Sunnī)」に由来しており、ムハンマドに由来する慣行に従う共同体こそが、イスラム共同体であるべきだという認識を持っています。

アリーの子孫のみが指導者になれると考えているシーア派に対して、スンニ派は過酷な弾圧を加えてきたという歴史を持ち、その過程でそれぞれの宗派は異なる教義を発展させてきました。この対立は現代でも続き、それによって今もなおたくさんの命が失われています。

アルカイダとは

かつてISIS(イスラム国)の上部組織となっていたアルカイダとは、どういった組織なのでしょうか。

アルカイダは、アラビア語で「基地(al=定冠詞、qāʿidah=座るという動詞の派生語)」を意味し、英語では「The Base」と訳されます。イスラム原理主義組織、すなわちイスラム法を規範として統治される政府と社会の構築を目指す政治的組織で、ISISと同じくスンニ派を主体とした国際的なネットワークです。アルカイダの指導者であったウサマ=ビン=ラディンは、1991年の湾岸戦争時にムスリムにとっての聖地であるメッカとメディナがあるサウジアラビアに米軍が駐屯したことから反米感情を募らせ、2001年のアメリカ同時多発テロの他、様々な対米テロを実行したとされています。アルカイダは、上に書いたようにイスラム法による共同体の構築を目指しているので、スンニ派以外の宗派に対し兵士だけでなく民間人をも巻き込んで残虐な行為を行うISIS(イスラム国)とは一切の関係がないと宣言しています。

それぞれの組織が各々の大義を掲げて泥沼化している模様ですが、あなたはどう考えますか。

Iraqi Freedom
Army.mil

そして今、イラク・シリアでは

6月上旬にイラク第2の都市モスルをわずか1日で陥落させたISISは、6月29日にイラク・シリア両国のISIS(イスラム国)制圧地域にカリフ(指導者)の統治領としてイスラム国家を樹立すると宣言しました。

現在イラクでは、シーア派のマリキ政権がスンニ派を冷遇したとして、ISIS(イスラム国)は政権と敵対関係にあります。マリキ政権は挙国一致の体制で臨戦態勢にありますが、国内での呼びかけは成功していません。現在では、マリキ政権から支援の要請を受けた米国と、圧倒的なシーア派国である隣国イランがマリキ政権を守ろうと援助を強めています。もともと敵国であった米国とイランが同サイドにいるのは奇妙な構図ですが、これが実際に起こっていることなのです。

また、中東全域にイスラム国家を樹立することを掲げているISIS(イスラム国)は、手始めにアサド政権の政府軍と反政府軍の内戦により混乱しているシリアへと軍を進め、両勢力に対し攻撃を強めています。

ニュースで見るように、多くの人が尊い命を日々失っています。宗教・思想・政治などが複雑に絡み合い、その全貌を知ることは非常に難しいですが、この記事によって今何が起こっているか少しでも理解していただけたなら幸いです。

他の記事の更新情報はFacebook,Twitterをチェック!

アイキャッチ画像の著作:j0sh
タイトル画像の著作:Danny Xeero

(記事作成:和田 有紀子   記事編集: 和田有紀子

「いいね!」で、最近の情報をチェック!