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【いまさら聞けない!】スコットランド独立運動とは?グレートブリテンの歴史的問題もわかりやすく解説!

記事作成: 和田 有紀子   記事編集: 和田有紀子 | Global |2014.09.29

今年2014年9月18日に、スコットランドが大英帝国からの独立を問う住民投票が行われました。投票率85%、うち独立賛成45%、反対55%という結果に落ち着きましたが、実は賛成派がここまで増加したのはつい最近のこと。一時は賛成多数で独立が決まるかとも見られていたスコットランドについて、その歴史的背景も含め、わかりやすく解説します。

国?植民地?スコットランドの立ち位置とは

独立をかけた住民投票で話題となっているスコットランドですが、そもそも「独立」とはどういうことでしょう。スコットランドの場合、20世紀後半に西洋諸国の植民地となっていたアフリカ各国が、その支配から解放され「独立」したこととはまた意味合いが異なります。
我々が通称”イギリス”と呼んでいる国は、正式名称を「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)」(以下、連合王国)といいます。この連合王国は、ブリテン島に属すイングランド、ウェールズ、スコットランドの3地方と、アイルランド島の北部に位置する北アイルランドで構成されています。
イングランド以外の3地方はそれぞれ、1536年、1707年、1801年に外交上手なイングランドにより連合王国へと編入されました。そして現在に至るまで、面積・人口・経済ともに最も大きな割合を占めているイングランドが政治的主導権を握っているため、イングランドに対する反感や独立運動などの動きは今までも少なからずありましたが(北アイルランドでのテロなどは、北アイルランド問題としても有名です)、様々な要因から現在スコットランドにて独立の機運が高まっています。現在は独自の議会を有するものの、予算などは本国政府が握っているなどなかなか複雑な関係のイングランドと3地方。国際的には国でもなく植民地でもなく、一国を構成する地方としてのスコットランド。その複雑な関係をもう少し深く見ていきます。

 実は世界一大きなつながり?イギリス連邦とは

なかなか複雑な関係を国内に有する連合王国ですが、じつはそうした複雑性は国内にとどまりません。
コモンウェルス(the Commonwealth)の名でも知られる「イギリス連邦」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。イギリス連邦とは、かつて帝国主義の時代に連合王国が植民地としていた国々のゆるやかな集まりで、植民地時代に大英帝国として組み込まれていた国々が元となっています。かつてはこれらの国から徴税を行うなど、厳格に連合王国が支配力を持っていましたが、現在では日常的に連合王国が意識されることはほとんどありません。カナダに代表されるように、イギリス女王を国家元首として仰ぐ国や、オーストラリアやニュージーランドのように、国旗の一部にユニオンジャック(連合王国の国旗)が使用されている国もありますが、連邦に加盟しているからどうということはまずありません。ただ驚くのはその数!なんと世界52か国が連邦に加盟しており(2014年現在)、現在は脱退している国も含めるとその数70。いかに連合王国の力が強大だったかがよくわかりますね。

ところでスコットランドってどんなところ?

その名を冠したスコッチ・ウィスキーやバグパイプ、キルトと呼ばれる男性の民族衣装などはおなじみかもしれませんね。また、スコットランドの中心エジンバラは大変歴史のある街で、新旧両市街が街ごと世界遺産に登録されているほか、ハリー・ポッターに出てくるホグワーツ魔法魔術学校のモデルとなったと言われるエジンバラ城は観光名所としても有名です。
スコットランドは本島と多数の島々で構成されており、気候は西から海風が吹くため夏は涼しく、冬は緯度の割に温暖です。また、石炭と鉄鉱石がよく採れるため、産業革命時には連合王国を支える原料供給地として栄えました(その頃に併合されているのはもちろん偶然ではありません)。ケルト民族にルーツを持つ人々が多数居住しているため、公用語としてスコットランド・ゲール語と英語が使用されていますが、スコティッシュ=イングリッシュ(Scottish English)とも言われるように、一般的にかなり訛りが強い英語が話されます。
また、通貨は連合王国共通のポンドを使用しているものの、教育制度に関しては他3地方とは異なる独自の制度を有しており、1998年には晴れて独自の議会を持つに至りました。しかし、予算額の決定権は連合王国の本議会(ウェストミンスター議会)が有するなど、完全な自由ではありません。

s_フリースコットランド
(伝統衣装のキルト(タータン柄)。大柄の格子柄を意味する「タータンチェック」はここからきました)

王への甘いお誘いがすべての始まり…?スコットランド独立運動の背景

1707年に連合王国に併合される以前から、イングランドは虎視眈々とスコットランドを狙っており、中世の時代から何度もスコットランドに侵攻していました。1603年にエリザベス1世(時のイングランド女王)の死後、スコットランドのジェームズ6世をイングランド王として迎えたことを契機に、当時の両国は「同君連合(同じ王を君主として仰ぐ国の連合)」の関係を結びます。ここからイングランドでの清教徒革命、続く名誉革命の波へと巻き込まれることとなり、名誉革命にてジェームズ6世の血筋は王の座を放棄・亡命し、1707年に同君連合から連合国家という1つの王国になりました。
独立運動は、こうした歴史的背景(イングランドに騙されて編入された…!という認識)が根底にあることは間違いありませんが、本国議会での不平等感(スコットランドからの議席はわずか数席)や、独立すれば北海油田から得られる利益分が増えるだろうという見通しなど、住民の生活に密接にかかわるような近年の事情も相まって、独立運動が盛んになってきています。独立はあり得ないだろうという考えのもと、2012年に独立を問う住民投票をキャメロン連合王国首相が許可して以降ますますその機運は高まり、9月18日の選挙を迎えました。結果は反対多数で落ち着いたものの、直前には独立賛成51%、反対49%と賛成優勢となる事態にも発展し、一時イングランドは賛成派の抑え込みに必死の様相でした。

世界に波紋、選挙後も収まらない独立熱

よいことばかりに思えるかもしれないスコットランドの独立。もちろんデメリットもたくさんあります。例えば……
・連合王国はポンド使用を認めないと主張しているため、ユーロ移行に莫大な資金が必要
・本社移転により経済力が弱まる恐れ(1/3の企業は、独立すればスコットランドから本社移転を検討すると回答)
・輸出の半分以上を占める連合王国への輸出が困難に
・金融危機に陥る危険性が増大(2010年に隣国アイルランドは財政破綻)

これはほんの一例に過ぎませんが、こういったことをすべて加味した上での今回の住民投票の結果だったのでしょう。スコットランドでは選挙を終え、一旦の決着が着きましたが、その火種は世界に飛び火しています。
スペインのカタルーニャ地方では、カタルーニャ人たちが以前よりスペインからの独立を求めていましたが、11月の独立を問う住民投票の実施を叫ぶ声が高まっています。
北部と南部で異なる民族が住むベルギーでは、古くから北部と南部の政権交代劇が何度も行われてきましたが、スコットランドの独立運動を受けて、分裂する可能性も否定できないと一部でささやかれています。
もはや一国だけの問題ではなく、全世界的に意味を持つ民族問題。どの国においても現代の事象だけでなく、歴史的問題に及んでいることがほとんどです。背後にあることにちょっと目を向けられるといつもよりニュースを深読みできるようになるかもしれませんね。

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(写真提供:Macieklew)

(記事作成:和田 有紀子   記事編集: 和田有紀子

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