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自由がなさそう?中国メディアの実態とは?

記事作成: 田中 栄里花   記事編集: 田中 栄里花 | Global |2015.12.27

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空いた時間にはTwitterやFacebookのタイムラインをスクロール、気になることがあればGoogleで検索、誰かと話したければLINEでメッセージを送る…。私たちの日常生活において、これらのネットサービスは必要不可欠なものとなっています。そして、ニュースを知るために利用するメディアとして、インターネットの割合が最近15年で約20倍も高まっているように、テレビや新聞と並び、インターネットが主要なメディアのひとつとなっています。

しかし、隣の国中国では、Googleなどの検索エンジンサイトや、FacebookなどのSNS、YouTubeなどの動画共有サイトなどは使用が禁じられています。それでは、日々私たちが重要な情報源として活用しているこれらのサービスのない中国の市民は、どのようにして情報を得ているのでしょうか。

今回は、隣国でありなが謎の多く「自由がなさそう」な国であり、インターネット人口が6億5000万人と世界最多を誇るネット大国でもある、中国国内のメディア情勢について見てみたいと思います。

 

習体制のもとでの規制強化

2015年11月1日、中国の刑法が改訂され、ネットのデマを取り締まる規制が新たに定められました。この規定によると、ネットにデマを流すと最大で懲役7年の量刑となります。そしてこの規定が、国内の言論統制のために乱用されるのではないかとの懸念が広がっています。これまでも中国政府は、「金盾(グレートファイアーウォール)」と呼ばれる国外との通信を制限する検閲システムによってネット規制を行っており、ネット上のすべての情報を監視してきました。そそて、今回の刑法改正は国内の言論統制がさらに強化されたと言えます。では、なぜ中国国内で規制が強まっているのでしょうか。その背景には、2012年の秋に習近平新政権が発足して以降、中国国内のメディア情勢が変化していることが指摘されています。どのように変化しているのでしょうか、中国メディアの現状とその変化を見ていきたいと思います。

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中国メディアの概況

中国のメディアにおいては、「新華社」「人民日報」「中国中央電視台(CCTV)」などの共産党政権が統制している新聞やテレビといった、いわゆるマスメディアが従来の主流であり、これらのメディアは「政府のプロパガンダ」として利用されてきました。しかし近年になって、インターネットを中心とするニューメディアが市民の支持をより集めるようになり、市民の情報源の中心になりつつあります。中国では、使用が禁じられているFacebookやTwitterなどの代わりとして、中国版Twitter「微博(ウェイボー)」や中国版LINE「微信(ウェイシン)」といった中国独自のインターネットサービスが普及しています。「微博(ウェイボー)」は、Twitter同様に140字でハッシュタグを用いながら交流を行うSNSです。フォロー・フォロワーなどTwitterと同様の機能があります。「微信(ウェイシン)」は、中国国内でもっとも使われているメッセージアプリで、文字・音声・写真・動画・表情・グループチャットなどLINEと同様のコミュニケーション機能があります。その他にも、中国版Facebook「人人网(レンレン)」や中国版Google「百度(バイドゥ)」、中国版YouTube「优酷(ユーク)」などがあり、使用禁止となっているインターネットサービスのほぼすべてに対応する代替的サービスが独自に作られ、非常に多くのユーザーに利用されています。

マスメディアの逆境

こうしたニューメディアの台頭によって、従来のマスメディアの影響力が失われつつあります。その一事例として、中国の主要なプロパガンダ機関の役割を担っている「中国中央電視台(CCTV)」の視聴率低迷があります。CCTVは、中国最大のテレビ局であり、78年の改革開放以来、そのチャンネルを拡大させており、現在では政治経済、芸能バラエティー、国際報道、スポーツなど放映分野は多岐にわたっています。中国全人口の約95%が視聴可能で、実際の視聴者は11億8800万人を超えると言われており、世界で最も視聴者の多いテレビ局と言えます。しかしそのCCTVの目玉番組である「春晩(チュンワン)」は今年、史上最低の視聴率にとどまりました。「春晩」とは旧正月の春節を祝って放送される、日本の紅白歌合戦のような中国の国民的年越し番組です。市民やコラムニストが、「くだらないから見ない」「春晩は社会全体の問題を無視して、コントなどで共産党をよき党に見せかけている」と酷評しているように、市民からの支持の低下が原因だと考えられます。

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中国メディアのこれから

このように、インターネットの普及によるニューメディアの台頭というメディア事情の変化のなかで、政府系マスメディアに対する市民の不信感が高まりました。そして、彼らが「マスメディアの流す情報は共産党の宣伝に使われているだけで、真実ではない」と感じるようになってきた結果、マスメディアの支持が低下していると考えられます。

ニューメディアを通じて世界中の情報が中国国内に、より正確かつ迅速に流れ込むようになりました。その意味で、中国国内で情報受信の自由化が進んでいると言えます。たしかに、ニューメディアの情報が一様に正しいと決めつけることはできません。しかし、中国国内に世界中の情報が豊富に流れ込み、一般市民の得る情報が国際的になっていることは確かです。中国のメディア情勢の変化に合わせ、今後中国と世界の間の情報の受発信が活発になるでしょう。そして、私たちも中国に対するイメージを変えるべき時でもないでしょうか。

参考資料
総務省平成27年版 情報通信白書
新唐人電視台「CCTV「春晩」史上最低の視聴率」2015/2/25
The Wall Street Journal「中国中央テレビの影響力低下―視聴者と広告主に変化」2014/11/19
NHK放送研究と調査「統制力強まる中国のメディア・言論政策」2014.2
NHK放送研究と調査「「ブログジャーナリズム」を通じて見る中国メディアの今」2012.10
BLOGOS中国版のGoogle・Facebook・LINEとは?中国インターネットの主要サービスまとめ

編集後記

最近、メディアについてよく考えます。あるとき、中国のメディアについて中国からの留学生を交えて考える機会がありました。そこで分かったことは、私の思うよりもずっと、中国は自由のある国である、ということです。中国国内のメディアについて調べれば調べるほど、中国市民の国際化・自由化を感じました。政府に批判的な意見をそのままネットに書き込むといけないので、隠語などを用いてネットで意見交換なども行っているようです。

そして、メディア規制といえば、決して他人事ではありません。中国と同様に、日本でもさまざまな規制が敷かれています。よく言われれるように、現代は非常に高度な情報社会です。そして、メディアは時に政府の鏡にも、市民の鏡にもなり得ます。情報ひとつで紛争を起こすことも、止めることもできるかもしれません。そんな今だからこそ、自国はもちろんのこと、世界各国のメディアについて考えることは非常に重要ではないでしょうか。

(記事作成:田中 栄里花   記事編集: 田中 栄里花 )

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